私写真の系譜2~『もう、家に帰ろう 田辺あゆみ』
 写真家の藤代冥砂が、妻でモデルである田辺あゆみを撮った写真集。
まさしく「私写真」である。個人的には、これは『愛されたくなる写真集
だなと思った。
二人の『愛情生活』がページの間から溢れ出しているかのようで・・・。
素晴らしい。というか、うらやましいぞ、あみ。
更に、田辺あゆみ著『ナマケモノのひるね』(イラストは、かのリリー・
フランキー)も読んで、ますますうらやまし過ぎる、田辺。愛され過ぎ。

 一枚一枚の写真にはキャプションがつけられている。その中でも
「死の気配のない写真が好きだ」という一節があり、とても印象的だった。
これは、明らかに荒木経惟の『センチメンタルな旅/冬の旅』を意識した
言葉であろう。
 同業者の大先輩であり、「写真家の夫が妻を撮る」という同コンセプトの
写真集を出すわけだから、意識しないほうが不自然だろう。
私は藤代氏が敢えてこのキャプションを付けたことに彼の矜持を感じた。

「被写体との関係性を撮る」写真において、「夫が妻を撮る(またはその逆も)」
というのは究極の表現なのだろうか?
(荒木経惟は「実は『センチメンタルな旅/冬の旅』で私の写真家人生は終わって
いる」と語っている)

 藤代・田辺夫妻の赤ちゃんは、もう産まれたのだろうか。
海が見える葉山の家で、光とシャッター音に包まれて育つ彼(彼女)。
一番うらやましい。

(『もう、家に帰ろう 田辺あゆみ』藤代冥砂著・ロッキングオン・2004)
(『ナマケモノのひるね』田辺あゆみ著・ベストセラーズ・2005)
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【2006/02/25 01:31】 | 読書 | トラックバック(2) | コメント(0)
沢木節健在ナリ~『凍』
沢木耕太郎の文章には、独特の「間」があると思う。
最初はその間が鼻につくこともあるけれども、いつの間にか引き込まれ、
時間を忘れて読み耽ってしまう。見事な文体としか言いようが無い。
『壇』以来10年ぶりとなるというノンフィクション『』でも、その
「沢木節」は健在だった。

 本作は、世界的な登山家である山野井泰史・妙子夫妻の物語だ。
彼らがヒマラヤの高峰・ギャチュンカンで遭遇した、雪崩による壮絶な
遭難と生還を描いている。 

 山があるなら登りたい、壁があるなら攀じ登りたい、頂がそこにあれ
ば目指す、たとえ命を落としても・・・といったメンタリティは、私には全く理解不能である。
 自分の願望のために多くの人々に心配をかけ、遭難の挙句救助となれば
多額の費用がかかり、自らの手足の指を失い・・・。
この人たちは一体、何をやっているんだ?と思っていた。

 しかし、読み進むうち、彼らに尊敬にも似た感情が生まれてくる。
共感したわけではない。夫婦愛に打たれたわけでもない。ただただ彼らを
「凄い」と思った。涙を禁じ得なかった。

「彼ら」とは、山野井夫妻と、沢木耕太郎である。

(『』沢木耕太郎著・新潮社・2005)

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【2006/02/20 22:58】 | 読書 | トラックバック(0) | コメント(0)
私写真の系譜~『たまもの』
ここに描かれている物語を、三角関係ドロドロで露悪趣味でキライ、
とバッサリ斬ることもできるだろう。
でも私は圧倒されて、何度も何度も読み返している。

神蔵美子と坪内祐三が恋に落ちたとき、彼女には夫が、彼には
婚約者がいた。それでも二人は結婚する。
数年後、神蔵は末井昭と出会い坪内と離婚、妻帯者であった末井も
離婚し神蔵と末井は結婚する。
しかし、離婚後も神蔵は坪内との関係を切ることができない。

自分の私生活や思いをさらけ出して、作品として成立するというのは、
有名人の特権かもしれない。
普通は隠したがるはずのものを敢えて世間に曝すことで、物議をかも
すことが狙いかもしれない。
でも、私はこの作品から目をそらすことができない。

この作品は、明らかに荒木経惟の『センチメンタルな旅』の影響下にある
だろう。私写真と文章というつくりはそっくりだし、荒木さんも、陽子さんも、
「センチメンタル」という言葉もたくさん出てくる。
改めて、アラーキーは凄いな、と思う。
でも、この作品も、それ以上に凄いかもしれない。

 著者の神蔵美子は、坪内祐三にとっても末井昭にとっても
陽子さん」だ。そうなると、関係が複雑になる分、嫉妬や軋轢、
引き裂かれそうな苦しみが現れてくる。
これは一対一の関係性を閉じ込めた『センチメンタルな旅』には当然無い
もの。
最初はそこに描かれている感情の渦に戸惑う。けれど読み進むうちに、
ひょっとしてこっちのほうがリアルで、普遍的なんじゃないか・・・と
思えてくる。

 荒木経惟は、「写真は被写体との関係性を撮るんだ」と言う。
関係性とは、愛という陳腐な言葉に言い換えることもできるだろう。

 愛ってややこしい。でも、どんな愛でも純愛なんだ。
そんなふうに思わせる作品である。

(『たまもの』神蔵美子著/筑摩書房/2002)

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【2006/02/16 10:33】 | 読書 | トラックバック(0) | コメント(0)
女子として、嫁として、母として~『東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン』
 ミリオンセラー、各界から大絶賛の嵐、向かうところ敵なし、という感じの本作。
私ももちろん、大号泣しながら一気に読んだ。特に後半は胸に迫る。
素晴らしい作品であることは疑いようが無い。
しかし、読了後「なんか、納得いかんなぁ・・・」ってところも無きにしも在らず。
男子と女子では微妙に読後感が違うのではと思われる本作。女子として、嫁として、
母として考えたところを書いてみたい。

 先日の教育TV『トップランナー』でMC本上まなみが突っ込んでいたとおり、
本作はズバリ「マザコンで何が悪い!」というリリー・フランキー氏の叫びである。

 女子としていわせてもらえば、う~ん、それを言っちゃあ、おしまいよ。。と
言うのが正直なところ。
 さらに嫁(または彼女)の立場で言わせてもらえば、オカンが「ボクの一番大切な
人」で「たった一人の家族」と言われた日には。。かなり複雑な気分。

 誰もが母親から生まれてくるわけで、みんな母親が一番好きで、一番大切なのだろう。
それは当たり前すぎて誰も今まで口に出さなかったから、それを正面から描いた本作が
ここまで支持されているのだと思う。
みんなもっと親に感謝して、親を大切にすべきなんだろうとも思う。そうしないと絶対
後悔するだろうことも理解できる。
でもでも、やっぱりそれは言って欲しくないことなのだ、彼氏から、夫からは尚更。
うそでもいいから「お前が一番好きで、大切だ」と言ってほしいのだ。

 そうでなかったら、家庭を持つってことが究めて難しくなってくると思う。
人間は誰でも、「好きな場所で、好きな人と、好きなように」生きる権利がある。
それが「オカンのいる家で、オカンで、オカンと一緒に住むこと」であったなら、
巣立つ意味など無い。
作者の両親が別居に至った理由がまさにそれ(母親>妻)なのは皮肉だし、作者が独身で、
結局「彼女」とうまくいかなかったのもむべなるかな・・・。

 しかし、しか~し、もう一つ母の立場から言わせてもらえば、ここまで息子に思われる
って本当に幸せだろうなと思う。
母親は、自分の人生を切り分けて子どもを育てる」このことを、どれだけの人が理解
しているだろうか?

 一人息子だから、仕方ないんだよね、リリーさん。オカンも喜びよるよ。

(『東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~』
             リリー・フランキー (著)/扶桑社/2005)

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【2006/02/08 13:20】 | 読書 | トラックバック(1) | コメント(4)
(まだ観てないけど)『ブロークバック・マウンテン』
年末から心ザワつくことが多く、落ち着かない日々で映画もほとんど観ていない。
そんな中、先日録画しておいたゴールデングローブ賞授賞式を観た。
ヴェネツィアでの金獅子賞受賞からずっと楽しみにしている
『ブロークバックマウンテン』、アン・リー監督の受賞コメントに涙・涙・・・。


  映画には人の考えを変える力があると強く信じさせてくれた
  愛というのは普遍的なもの、誰もが恋に落ちるし、どんなに回り道をしても
  愛の謎を解きたいと思っている、誰かと結びつくために

                                                           」
  今後も、今回お礼を言えなかった人の影に悩まされるでしょう、そして
『ブロークバックマウンテン』もそんな物語です、と・・。

観る前からこんなに心惹かれて、実際映画館で私は一体どうなってしまうのだろう?
 しかし、この映画単館、しかも春休み公開(泣)。
 ・・・でも絶対、観たいです。

 来月には公開前にアカデミー賞もあるし。これも毎年の楽しみ。
今度はアン・リー監督何てコメントしてくれるんだろう?ってまだ確定していない
けど(笑)ああ~待ちきれない、ホントに!!

(『ブロークバック・マウンテン』監督/アン・リー
        主演/ヒース・レジャー、ジェイク・ギレンホール/2005・USA)

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【2006/02/08 01:35】 | ブロークバック・マウンテン | トラックバック(0) | コメント(4)
真紅のthinkingdays


いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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