『母親になって後悔してる』~ それって本当に 「後悔」 なの?

「もし時間を巻き戻せたら、あなたは再び母になることを選びますか?」
この質問に 「ノー」 と答えた23人にイスラエルの社会学者がインタビューし、まとめた書
昨年の春頃、この本の存在を知って驚くと同時に 「読んでみたい」 と思った
もちろん一番に考えたのは 「自分は後悔しているのか?」 ということ
答えは100%NO、しかし子育てが辛かったり、孤独を感じたりしたことは数えきれないほどある
正直、自分は母親に向いていないダメ母だと思っているから
物凄く消耗する本だった
まず、書店でレジに持っていく時点でエネルギーを要する
「あ、この人、、、後悔してるんやな」 って思われるんじゃないかと(小心者なんです)
次に、買ったはいいけど息子がこの本を目にしたら嫌な気分になるんじゃないか? と心配になる
(息子は一人暮らしをしているのだけど、帰ってくると必ず私の本棚や机をチェックするのです)
「お母さんはな、100%後悔してないと断言できるからこの本買ったんやで」
「はいはい」
母の心配をよそに、息子は平熱の低いZ世代であった
読む前からそれらなんとも高い(?)ハードルを越え、やっと読み始める
疲れた、、、
23人の強烈なマイナス思考が行間に渦巻いて、呑み込まれてしまいそうな読書体験だった
後悔ってとてもネガティブな感情だから
母親になったら、二度と母親ではない自分に戻れない(わかる)
母親だという責任感に押し潰されそうになる(わかりみが深すぎる)
わかるけれど、しかしそれを 「後悔」 するという感覚は自分にはない
( 「仕方ない」 と諦めているだけなのかもしれないけど)
NHK 「クローズアップ現代」 でも本書は取り上げられ、様々な意見が紹介されていた
それらを読んで思ったのは、「それって本当に 「母親になった」 ことへの後悔なのかな?」 ということ
結婚したこと
今の夫を選んだこと
もっと言えば、女に生まれついてしまったこと
どちらかと言えばそういうことへの 「後悔」 なんじゃないかと思った
もしくは 「母親であることのしんどさ」 を大っぴらに口に出せないことへの 「不満」 なのでは?
意外だったのは、皆一様に 「子どものことは愛している」 と語っていること
読む前は 「そりゃ子どもとの関係が悪かったら後悔もするよな」 と考えていた
もし母親になったことを後悔することがあるとしたら、子どもとの関係が良くないときだけだと私は思う
いや、、、それでも、悲しくはなるけど 「後悔」 はしないのではないかな
私が常々感じているのは 「不公平」 だということ
生物学的に女体しか子どもを産めないこと
そのことが女性にもたらす負担の大きさ
母親「だけ」が背負わされる責任はどうよ?
思えば私の母も、「生まれ変わったら結婚しない」 と言っていたなぁ
専業主婦じゃなくて、働いて自分の力で生きてみたい、という思いが強かったのだろう
選ばなかった道
果たせなかった夢
それは誰にもあること
だからこそ後悔する人に 「自分が選んだこと」 だと突き放さない社会であってほしいと思う
そして 「母親になって後悔してる」 と口に出す前に、よく考えてみてほしいとも思う
それって本当に 「後悔」 なのか? と
新潮社のこちらのサイトで本書がわかりやすく(面白く)紹介されているので、興味ある方は是非行ってみてください
( 『母親になって後悔してる』 原題:Regretting Motherhood/オルナ・ドーナト:著/鹿田昌美:訳
/新潮社・2022 )
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『原節子の真実』

(承前)
『東京物語』 その偏執的なまでのフレーム内フレーム、会話シーンの切り返しに 「これが小津調か〜」 と感激しながら、私は一人の登場人物に目が釘付けだった
「紀子」 という名の、亡くなった次男の妻
「原節子だ…!」
彼女の映画を観るのは初めてだけれど一目でわかる
日本人離れした容姿と誰にも似ていないオーラ
唯一無二の存在感を放ち作品を支配している
今敏監督の 『千年女優』 を観たとき 「これは原節子がモデルなんだろうな」 と思った、その本人が生きて演じているのだ
世界の映画監督がベストワンに選ぶこの不朽の名作を私ごときが評価することはもちろんできない
ただ、もっともっと原節子を観たくなり 『東京物語』 とともに 「紀子三部作」 と呼ばれる 『晩春』 『麦秋』 を立て続けに観た
どちらも原節子演じる 「行き遅れ」(死語) の娘・紀子が嫁ぐまでの顛末を描いたホームドラマである
どちらの作品も価値観の古臭さは否めないものの、コミカルなシーンもあり 「意外と面白い」 というのが率直な感想
すっかり原節子に魅了されてしまった私が次にしたのは石井妙子氏のノンフィクション 『原節子の真実』 を読むこと
2年前に読んだ 『女帝 小池百合子』 の感想(IGにアップ)に 「私は石井妙子氏を信じたいと思う」 と書いている
ノンフィクションといえど書き手のバイアスがかかるのは当然で、そこに現れる 「真実」 とは書き手の考えるそれであろうことを念頭に読み進めた
本作も力作であり、テーマが女性著名人であること、昭和日本の映画史となっていることは平成日本の政治史ともいえる 『女帝』 と似ているが、決定的な違いは著者の対象へのまなざしであろう
永遠の処女と呼ばれ第一線で活躍しながら突然映画界を去り、世間から50年以上身を隠した伝説の大女優・原節子への憧憬と好奇心は隠しようもなく行間から滲み出ている
小津安二郎との関係や北野武へ贈ったとされる数珠の逸話など、これまで 「既成事実」 とされていたことの 「真実」 を知れたことは幸いだった
しかし彼女と 「義兄」(原節子の姉の夫、映画監督であり思想家の熊谷久虎) との関係については理解に苦しむし、正直嫌悪感でいっぱいになる
黒澤明の名作 『羅生門』、黒澤が望んだ主役の第一候補は原節子であり、それを許さなかったのは 「義兄」 であったと本書にはある
あの京マチ子が原節子だったら、、、どうか想像してみてほしい
喉から手が出るほど欲しかった役柄を潰され、恋愛から遠ざけられながらなぜ彼女は 「義兄」 に執着したのか?
彼女ほどの逸材を羽ばたかせキャリア形成を助けるブレーンが他にいなかったのかと、一映画ファンとして悔しく、残念に思う
「義兄」 との一蓮托生を望んだのが原節子本人であったことは紛れもない 「真実」 であったとしても
戦前、戦中、戦後の日本映画界と、それを支えた原節子以外の人物たちについても数多く言及されている
映画は 「芸術」 とはほど遠い下等なものとされていたこと
女優がいかに見下された存在であり、低い地位に貶められていたか
同年代だった山中貞雄と小津安二郎は戦地に赴き、黒澤明は徴収さえされなかったこと(それは軍部と近い関係にあった東宝の口利きによるものであったという)
そして山中貞雄はひとり戦地で命を落とす
小津の悲しみ、悔しさはいかばかりだったことか
戦後、小津が黒澤に対して複雑な感情を抱いたとしても無理はないと思える
そんな彼らの 「ミューズ」 だった原節子もまた、彼らと同じく戦争の犠牲者だったのだ
今回新しい外国映画を観て、古い日本映画を知ることができた(温故知新の逆?)
今まで古い映画(特にモノクロ作品)は敬遠してきたところがあるのだけれど、これからは意識して観ていきたいな、と思ったり。。
( 『原節子の真実』 石井妙子・著/新潮文庫 )
本は待ってくれる(積読の言い訳)

図書館通いをしていた頃は、新聞広告を見て興味をひかれた新刊は片っ端から予約していた
色んな本をたくさん読んだ気もするけれどあまり記憶にない
印象に残った本は何年も後にふと思い出し 「読み返したい」 と思うことがある
本棚を探しても見つからなくて 「そうだ、図書館で借りたんだった」 となる
だから最近は読みたい本は買うことにしている(図書館に通う時間が取れないことが一番の理由だけど)
本も高いので月に何冊もは買えず、厳選してほんの数冊だけ
月一二文、という言葉を知っていますか? 月に一回二冊文庫本を買うこと
それくらいが理想かなと思うけれど、文庫になるのが待ちきれなくて単行本を買うことが多い
そして買ったことに満足(安心)して積読するのが常
2020年3月、仲野徹先生の絶賛ツィートで知った 『ザリガニの鳴くところ』 もそんな本だった
帯には 「2021年本屋大賞翻訳小説部門第1位」 とあるので、購入したのは2021年の春
そして読んだのは2022年、今年の春
存在を知って手にするまでに1年、それから更に1年以上本棚にあった
遂に読み始めたのは映画化作品(『Where the Crawdads Sing』 リース・ウィザースプーン製作、2022年夏アメリカ公開予定)のトレイラーがリリースされたから
公開前に読みたい、いや読まねば!と思ったのだった
さすがは世界的ベストセラー、作品世界に入り込み忘れられない読書体験となったことは言うまでもない
映画化作品について思うところはまた別の機会に、、、って日本公開決まってないけどいつ観れるんだろう(笑)
実はそんな積読本はまだまだたくさんある
単行本発売日に買った村上春樹の 『騎士団長殺し(上・下)』 もそんな一冊(二冊)
読みたいと言う母に貸して、返ってきたら積読してしまって今に至る
でも絶対に読む、いつか必ず
本はそこにいて、私を待ってくれているから
『夏物語』

著者の作品からは(理由あって)少し離れていたのだけれど、この作品は読みたくて読みたくて
なんせナタリー・ポートマンも読んでいる、村上春樹も大絶賛
文庫になって即購入
しかし、、、
なんか既読感が、、、と思ったらこれ、『乳と卵』 のリライトなんですね(第一部)
だからナタポーが持っていた本が 『Breasts and Eggs』 だったんだ(納得)
そう気づいたら読み進むのがしんどくてしんどくて
やっと第一部を読了してしばらく(数ヶ月)放置していた
第二部以降、読み始めると速かった
著者の(いい意味での)しつこさ-自分の中のテーマを深く深く掘り下げ考え続ける姿勢-が効いている
それがこの長編小説を読むべきもの、価値あるものにしている
とても真摯で誠実なものを受け取った気分
話題の反出生主義とか精子提供による出産とかアセクシャルとか
本書を巡るキーワードは多々あるけれど
「子どもを持つということ」 を考え続けた一人の女性を巡る物語です
紺野さんの鋏のところで一番泣いた
私は夏子や遊佐のように強い人間ではないから
紺野さんのようにしか生きられない人の気持ちがよくわかる
紺野さんは夏子が好きだったんだな
あこがれと言ってもいいかも
自分の大切なものを褒められてうれしかったんだな
それが 「鋏」 だったことが象徴するもの
これで断ち切って
これで闘って、と
善さんを救って欲しかった
善さんが背負わされたものが重すぎる
せめてその重みを彼女が誰かと共有できたらよかったのに
彼女といるとしんどくなった逢沢の気持ちもわかるけれど
人は子どもの頃、どれだけ愛されたかでその後の生き方が変わってくるのだろう
コミばあや母や巻子に愛された記憶が夏子を生かしている
夏子は自分の子どもに会いたいこと以上に、彼女たちの時間を追体験したいのではないかと思う
母の時間、祖母の時間、小さな誰かを愛する時間
そして今は変わってしまった成瀬くんにも、夏子は生かされている
川上未映子の長編を読むといつも村上春樹の 『ノルウェイの森』 を思い出す
内容じゃなくて構成が似てると思うのです
好き嫌いはもちろんあるでしょう
でも本当に読む価値のある、考えさせられる作品だと思う

( 『夏物語』川上未映子著・文春文庫 )
『掃除婦のための手引き書』 ルシア・ベルリン作品集

A Manual for Cleaning Women: Selected Stories Lucia Berlin
表題作が一番好き。
次に 「沈黙」 「さあ土曜日だ」 かな。
昨年の発売当初から読みたくて読みたくて。。結局文庫化まで我慢できなかった。
全24篇、どれもそれぞれに驚きと人生の痛み、哀切、不可思議に満ち満ちている。
そして何よりも 「心をつかまれ、揺さぶられる」 読書体験であることの歓びに。
「ただ頭がいいとか才能だけじゃない。魂の気高さなのよ」
美しいカバーガールはなんと著者ご本人だそう。
翻訳は言うまでもなく最の高である岸本佐知子氏。
しかし原書に当たりたいという悪い欲望が、またまた頭をもたげている。

『少年と少女のポルカ』
そして、私たちは本屋に帰る~ 一色文庫

初めて一色文庫さんへ。
ここは 「大阪から古本屋がすべて無くなるとして、最後に残る店」 と言われる方もいらっしゃるらしい、知る人ぞ知る場所。
一色文庫さんを知ったのは、もう10年以上前じゃないかな。日本橋にお店があった頃から、行きたくて行きたくて・・・。でも移転されて、私も日々の生活で手一杯で(映画観るのに忙しかったんやろ!というツッコミはなしで)、ご縁がなかったのですが。
先月、新聞の紹介記事を発見。なんと、再移転された先は私の生活圏内ではないですか! これは・・・運命ですね(笑)。
仕事終わりの夕暮れ。辿り着いたお店には看板もなく、ガラスの引き戸をガラガラっと開けて入店します。中に入ると、森の香り、木の匂いが。魔法にかけられたように時間を忘れ、本たちの背表紙を追ってしまいました。
ツィートがとっても面白いご主人とはレジで対面したのですが、何だか初めて会った気がしなかった。少しだけお話して、閉店時間も近かったのでお暇しました。
本はもう増やせないと思いながら、積ん読になるとわかっていてもつい買ってしまう。結局、私の帰る場所は本のあるところなのかな、と思ったり。
次は手持ちの本を持って伺おうかな。
みずうみの読書会
人生初の読書会に参加しました。

大阪市中央区谷町六丁目の 「複合文化施設 萌(ほう)」 にある 「ことばをたべる
カフェ・みずうみ」 さんにて。私はこの場所と、管理人・Sさんが大好きなのです^^
読書会のお題は、遠藤周作 『沈黙』! 小説は確か高校時代に読んだきり。映画は
もちろん初日に観ました。これは元文学少女(笑)の血が騒ぐ! 勢いで参加してしま
いました。

↑ ↑ みずうみさん名物 漢字クッキー ↑ ↑
初対面の方ばかりでしたが私全く人見知りをしないので(笑笑)、エンジン全開で
しゃべらせていただきました。とっても楽しかったー。
これからはこういうイベントにも、ちょっとだけ勇気を出して参加したいな。
◆◇ ◆◇
鍵コメントを下さった方へ。
日々なんとか元気に生きてます。いつもありがとう!
また伺いますね^^
真紅拝

大阪市中央区谷町六丁目の 「複合文化施設 萌(ほう)」 にある 「ことばをたべる
カフェ・みずうみ」 さんにて。私はこの場所と、管理人・Sさんが大好きなのです^^
読書会のお題は、遠藤周作 『沈黙』! 小説は確か高校時代に読んだきり。映画は
もちろん初日に観ました。これは元文学少女(笑)の血が騒ぐ! 勢いで参加してしま
いました。

↑ ↑ みずうみさん名物 漢字クッキー ↑ ↑
初対面の方ばかりでしたが私全く人見知りをしないので(笑笑)、エンジン全開で
しゃべらせていただきました。とっても楽しかったー。
これからはこういうイベントにも、ちょっとだけ勇気を出して参加したいな。
◆◇ ◆◇
鍵コメントを下さった方へ。
日々なんとか元気に生きてます。いつもありがとう!
また伺いますね^^
真紅拝
私写真の系譜4/自分だけの神様~『たまきはる』

前夫・坪内祐三への思いを引きずりながらも、「末井さんと生きていこう」 と
結ばれた前作 『たまもの』 から12年。難産の末、やっとの思いで産み落とさ
れた、神蔵美子による私写真集/私小説。聖書をひも解きながら 「神」 につ
いて、夫婦について、愛と死について、時には鬱に苛まれながら、著者が考え
続けた記録。「たまきはる」 とは 「魂極る(霊剋る)」 の意。
あかあかと一本の道とほりたりたまきはる我が命なりけり (斎藤茂吉)
前作 『たまもの』 と同様かそれ以上に、著者の思考は過去へ、過去へと遡
る。著者が関わった超個性的な面々、特に寺山修司との関係には衝撃を受け
た。一番大きな出来事は、最愛の父の死。映画を 「シャシン」 と呼ぶ技師だっ
た父に著者は愛され、多大な影響を受けたのだろう。「父の娘」 であるという決
してぶれない芯が根底にあるから、彼女は 「愛の嵐」 の混沌の最中でも、鬱
の闇の中でも表現を模索する。奔放で我がままで、好き勝手に生きているよう
に見える著者を支えているのは、ただ無条件に愛された記憶。
愛の入り口では、誰もが 「自分だけの神様」 を探す。彷徨い続けた著者は
最後に 「父の愛」 に回帰し、与えられた愛の大きさを思う。そして読み終わっ
た私は改めて、著者の夫・末井昭という人に、思いを馳せずにはいられない。
表紙を飾りながら、どこか存在感の薄い登場人物としての 「スエイ」。名著
『自殺』 の著者であり、毎日欠かさず、「戦争反対」 とツィートし続ける末井
さん。彼こそが、神が著者に与えた 「たまもの」 なのだと。
( 『たまきはる』 神蔵美子・著/2015・リトルモア)
マリちゃんとなっちゃん
私写真の系譜3~『メモワール 写真家・古屋誠一との二〇年』
忘れ難いポートレイトがある。

20年近く前に切り抜いた、色褪せた古い新聞記事。痩せこけた身体で赤ん坊
を抱いたその女性は、何かを訴えかけているようにも、虚空を見つめているよう
にも感じられる。
彼女の夫によって撮られたその写真は、粗悪な新聞紙に転写され、手のひら
よりも小さなサイズに閉じ込められてもなお、その眼差しが私を捉える。
この写真を撮影したのは、オーストリア在住の写真家・古屋誠一だ。亡き妻・
クリスティーネと過ごした8年足らずの日々を、『メモワール』 と題した写真集
のシリーズとして発表している。

写真家であり小説家でもある小林紀晴が、古屋誠一(と彼の写真)に魅せら
れ、20年の歳月をかけた取材を結実させたノンフィクション。
欧州に渡った古屋はクリスティーネという女性と出逢い結婚、子を成す。しか
し彼女は心を病み、自ら命を絶った。屋上から身を投げた妻の姿を、古屋は撮
影する。その写真に、小林は捉えられたのだ。彼が古屋に近づくことは、「写真
とは何か?」 という、自らのアイデンティティにも関わる問いかけに対する、答
えを探る旅であった。
写真を撮れば、否応なく被写体との関係性が浮かぶ。被写体を晒し、生業に
するということ、それに群がる 「呪われた眼」 を持つ私(たち)。 写真がもつ
本質的な罪と、その罪を自覚しながら、満身創痍で罰を受けようとする者。胸が
詰まる。読み進めるのが辛くなるほどに。
写真が写す 「真」 とは、撮る人の内側なのだ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
この本を書評で取り上げてくれた、いとうせいこう氏に感謝します。
( 『メモワール 写真家・古屋誠一との二〇年』 小林紀晴・著/2012・集英社)

20年近く前に切り抜いた、色褪せた古い新聞記事。痩せこけた身体で赤ん坊
を抱いたその女性は、何かを訴えかけているようにも、虚空を見つめているよう
にも感じられる。
彼女の夫によって撮られたその写真は、粗悪な新聞紙に転写され、手のひら
よりも小さなサイズに閉じ込められてもなお、その眼差しが私を捉える。
この写真を撮影したのは、オーストリア在住の写真家・古屋誠一だ。亡き妻・
クリスティーネと過ごした8年足らずの日々を、『メモワール』 と題した写真集
のシリーズとして発表している。

写真家であり小説家でもある小林紀晴が、古屋誠一(と彼の写真)に魅せら
れ、20年の歳月をかけた取材を結実させたノンフィクション。
欧州に渡った古屋はクリスティーネという女性と出逢い結婚、子を成す。しか
し彼女は心を病み、自ら命を絶った。屋上から身を投げた妻の姿を、古屋は撮
影する。その写真に、小林は捉えられたのだ。彼が古屋に近づくことは、「写真
とは何か?」 という、自らのアイデンティティにも関わる問いかけに対する、答
えを探る旅であった。
写真を撮れば、否応なく被写体との関係性が浮かぶ。被写体を晒し、生業に
するということ、それに群がる 「呪われた眼」 を持つ私(たち)。 写真がもつ
本質的な罪と、その罪を自覚しながら、満身創痍で罰を受けようとする者。胸が
詰まる。読み進めるのが辛くなるほどに。
写真が写す 「真」 とは、撮る人の内側なのだ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
この本を書評で取り上げてくれた、いとうせいこう氏に感謝します。
( 『メモワール 写真家・古屋誠一との二〇年』 小林紀晴・著/2012・集英社)
2013年3月に読んだ本/8冊 其の弐

続き。
先日、『サワコの朝』 に作家の小川洋子さんが出演されてましたね。私は
小川さんのあまり熱心な読者ではないのですが、その 「書物への愛」 を語
る姿に感動しました。意外にも、小川さんの生まれたおうちは、『家庭の医学』
くらいしか本がなかったそうです。やっぱり人間って環境も大事だけれど、「持
って生まれたもの」、生まれ持った資質が大きいと感じます。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
『B級恋愛グルメのすすめ』 島本理生・著 ★★★
理生ちゃんのエッセイは、『CHICAライフ』 以来の2冊目。相変わらず、シ
リアスな小説作品とは真逆な、どちらかと言えばトホホ方面、ラーメン小池的
な奔放生活が綴られています。本作のハイライトは元夫との再会・再婚の過
程。ここに多くのページが割かれています。理生ちゃん、(今度こそ)お幸せ
に~。
『藝人春秋』 水道橋博士・著 ★★★★
話題の本。やっと順番が回ってきました。評判に偽りなし。
一番驚いたのは、博士が甲本ヒロトと中学の同級生だった、ということ。そ
して、朝日新聞に掲載され、私も衝撃を受けた稲川淳二さんの 「告白」 が、
博士の手によってとうの昔に文章化されていたとは・・・。
笑いあり、涙あり。一気に読んでしまいました。「辛抱」って、「辛さを抱き
しめる」 ことなんですね(感動)。しかし、、、この後に読んだ本↓の印象が、
あまりにも強く。
『安井かずみがいた時代』 島崎今日子・著 ★★★★★
ノンフィクションライター、島崎今日子さんの文章が好きで、著作を見つけ
ると必ず読みます。そして本作は、個人的に島崎さんの「最高傑作」では
ないかと。
安井かずみ、愛称ZUZU。「芸能界」 や 「歌謡曲」 が一般人の手の届
かない 「憧れ」であり、キラキラ輝いていた時代のフロントランナー。1939
年生まれといえば、私の母と同世代。こんなにも 「ブっ飛んでいた」 女性
がいたのですね。
「安井かずみがいた時代」 というよりは、安井かずみという女性そのもの、
もっと言えば 「ZUZUとトノバン」 安井かずみ&加藤和彦という元祖ワーキ
ング・カップルの真実を、彼らを取り巻いていた綺羅星のごとき面々へのイン
タビューであぶり出してゆきます。それはまるで 小説 「藪の中」 のように
スリリングで痛ましく、謎めいて映る。果たして、彼女(たち)は幸せだったの
か? 華々しくも時代を駆け抜けた 「寵児」 の、恍惚と苦悩がそこに在りま
す。
「ZUZUはずっとジュリーに片思いしていた」 という証言に驚き。彼女の最も
有名な 「同志」、加賀まりこのインタビューがないことが「画竜点睛を欠くの
では?」との思いも、無きにしも非ずです。しかし、語らないのもまた、加賀さ
んらしいのかな、と。
『安心毛布』 川上未映子・著 ★★★☆
WEB連載をまとめた 「漢字4文字」 シリーズ完結編。川上さんのエッセイ
の中では、私はこのシリーズが一番好きです。『発光地帯』 買おうかなぁ。
2013年3月に読んだ本/8冊 其の壱

ご近所の桜・満開
春休みです。母が来たり、甥っ子(新生児じゃないほう、弟の子)が遊びに来
たりで落ち着かない日々を過ごしております。とは言っても仕事は毎日だし、
隙を見て映画観に行かなくちゃだし・・・。バタバタ。
先月読んだ本は8冊。4冊づつ、2回に分けて記録します(長くなるので)。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
『ちょうちんそで』 江國香織・著 ★★★☆
本作でも、変わることのない江國ワールドが展開されます。私のそれとは
全くかけ離れた主人公の人生が、こんなにも身につまされ、胸に迫ってくる
のは何故なのだろう。飴子の「いま」はすぐに予想がつきます。幕切れが少
し、物足りない気がして残念(雛子が救われない気がしたので)。
『ぼくらの近代建築デラックス』 万城目学&門井慶喜・著 ★★★★
作家二人の、近代建築を巡る旅。大阪・京都・神戸・横浜・東京の5都市で、
門井氏が蘊蓄満載の弾丸トークをかまし、万城目さんが(天然)ボケをかまし
ながらそれを受け、かつ突っ込みを入れるという、大阪人の面目躍如な高等
話術を披露しています。
私は大阪に住んでいるので、淀屋橋のサンマルクカフェって、そんな由緒
ある建造物やったんか、、、という驚きもあり。面白かった! こんな旅がして
みたくなる。オススメ本です。
『掏摸(スリ)』 中村文則・著 ★★★
『何もかも憂鬱な夜に』 がとてもよかったので、中村さんの作品、次はどれ
を読もうかな? と考えていた矢先。新聞の書評コーナーに、今をときめく人
気俳優・綾野剛くんが登場。この作品を紹介していたのです。まぁ、何という
偶然! ということで、主人公はもう、綾野くんの顔を当てはめて読んでしま
いました(笑)。
『ザ・万字固め』 万城目学・著 ★★★☆
先日の 『偉大なる、しゅららぼん』 映画化決定のニュース。NHKの朝の
ローカルニュースで流れたからビックリ。公共放送でアナウンスされるなん
て、万城目さんすごいやん、と少し感動。
まぁ、過去に映像化された万城目作品、全てが関西地方を舞台にしてい
るので、地方の活性化(経済波及効果?)的な慶事として捉えられている
のでしょうね。
さて本作は、『ザ・万歩計』 『ザ・万遊記』 に続くエッセイ集。瓢箪への
偏愛ぶりや、お嬢さんや奥様のことにも言及されていて相変わらず面白い
んだけど、ちょっと物足りなかったかな。
ご本人は変わらなくても、読者の方はどんどんハードルが上がってしまう、
ってことありますよね。万城目さ~ん、ずぅ~っと応援してるからね~。
てなわけで 「其の弐」 につづく。

花より団子
2013年2月に読んだ本/6冊

先月は 「ここ数年読んだ小説、向こう数年読むであろう小説」 の中でも
ベストと思える小説に出会いました。ところが、ある土曜日。カーラジオから
流れてきたのは 「村上春樹が4月に新たな長編小説を発表する」 という
ニュース。楽しみですねぇ。
ニュースといえば、『小さいおうち』。文庫化されて、映画化のキャストも
発表されましたね。時子奥さま、松たか子さんか・・・。うーん。。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
『そして、人生はつづく』 川本三郎・著 ★★★★☆
映画タイトルをもじった川本さんのエッセイは大好き。今回はキアロスタミ
です。奥様を亡くされてからのひとり暮らしは、変わらない 「妻恋の日々」
でもあります。しかし、川本さんって基本 「ミーハー」 だと思うんですよね。
臆面もなく 「井上真央のファンになった」 とか書いているし(笑)。ずっとお
元気で。
この本の中で、川本さんが紹介されている本を2冊、読んでみました。以下。
『母の遺産-新聞小説-』 水村美苗・著 ★★★★★+
大佛次郎賞を受賞した長編小説。水村美苗さんの著作は初めて読みまし
たが、もう、凄いです。圧倒されます。「モノが違う」 というのはこのことです
ね。
「最上のわざ」 とは真逆な、超がつく俗者の母。嫌悪感でいっぱいになり
ながらも、ページを繰る手が止められない。文体はもちろん、描写力、構成
力全てに隙がなく、重層的で緻密でありながら感情を疎かにしない。真っ当
な文学であることは、すなわち最高にエンターテインメントでもあることを証明
した大傑作。
2010年代を代表する小説であることは間違いないでしょう。特に、女性に
オススメいたします。
『高く手を振る日』 黒井千次・著 ★★★☆
刊行当時、書評欄で話題になり、気になっていた作品。妻を亡くした男が、
大学時代同窓だった(そしてほのかな思い出を共有している)女性と再会す
る。古希を過ぎた男女の恋愛。正直、ここまで「抑制」しないといけないもの
かとも思いましたが・・・。携帯メールによるやり取りが、21世紀してます。
『第二図書係補佐』 又吉直樹・著 ★★★★
「第二」でしかも「補佐」。解説や書評ではなく、「自分の生活の傍らに、常
に本という存在があることを書こうと思いました」。私も、ずっと本に助けられ
てきた一人です。又吉くんのことが、ますます好きになった一冊。
『空想読解なるほど、村上春樹』 小山鉄郎・著 ★★★★
村上春樹を長年読み続け、取材してきた著者だけに、様々な 「トリビア
(へぇ)」 が満載です。ハルキストなら面白く読めるはず。そういえば、ハ
ツミさんのワンピースも 「ミッドナイト・ブルー」 だったなぁ、とか。
『水瓶』 川上未映子・著 ★★☆
高見順賞を受賞した、著者の第二詩集。でも、これ限りなく散文に近い詩、
ですよね?(或いは、詩に近い散文?) 「バナナフィッシュ」 は好きです。
2013年1月に読んだ本/6冊

先月は上下巻ものが2冊あったので、結構ガッツリ読みました。そして私に
しては珍しく、漫画を6冊。
漫画はたま~に、ちょこちょこ読む程度ですが、今年からは記録していこう
と思います。ミシェル・ゴンドリーが映画化したという 「うたかたの日々」、
岡崎京子版を注文しちゃったぜィ~♪ 楽しみ楽しみ。。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
『水のかたち』(上)(下) 宮本輝・著 ★★★☆
主人公があまりにラッキー過ぎるきらいはありますが、「清々しい」という
言葉がぴったりな作品。読後感がいいです。今話題の「糖質制限ダイエット」
についても記述あり。「あとがき」 には、作品誕生の秘密が。
『歓喜の仔』 (上)(下) 天童荒太・著 ★★☆
タイトルから、作者の代表作 『永遠の仔』 を想起しますよね。本作でも、
「弱者」 であるがゆえに子どもたちが宿命的に背負う哀しさ、強さ、苦しみ、
絶望そして希望が描かれています。でも、期待したほどではなかったかな。
歓喜より永遠でした。
『これが本当の 「冷えとり」 の手引書』 進藤義晴、進藤幸恵・著 ★☆
「私たちが 「冷えとり」 の元祖だ!」 とおっしゃっています・・・。
『東大生だけが知っている 「やる気スイッチ」 の魔法』 岡田真波・著 ★★☆
タイトル買いでしたが。
『何もかも憂鬱な夜に』 中村文則・著 ★★★★★
ご存じ、ピース又吉直樹が大プッシュしている作品。半分近くまで 「(タイ
トル通り)暗い・・・」 と思いながら、どよ~ん、と読んでいました。しかし。。
あるところから涙が止められなくなり(しかもその時、電車の中だったのに)、
お昼休みに泣きながら読み終え、文庫本を買って帰りました。又吉くんの解説
が読みたくて。帰りの電車で 「文庫版あとがき」 と、解説を読んでまた涙。
こんなことは、本当に久しぶりです。本はいつも図書館で借りて読むのです
が、「これは!」 と思った本は買います。またいつか、読み返したい作品。
『非道に生きる』 園子温・著 ★★★★★
いや~、もう、最高! 小学校時代のエピソード(裸で登校した、とか)は知
っていたのですが、いやはや、園子温がここまで大天才だったとは。。
「刹那に生きる」 人生哲学を語り、批判上等、むしろ既成の映画概念をぶち
壊すために映画を撮っているんだと言い切っています。
しかし、そんな彼でも震災後の映画作りには迷いがあったようで、原作とは
異なる 『ヒミズ』 のラストはあれでよかったのか、今も迷っていると正直に語
っています。そこにまた、彼の真摯さや覚悟を感じて好感するのでした。彼の
映画が好きな人も、嫌いな人も、是非読んでみて下さい。
ニッポンに、園子温あり。うれしいですねぇ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
『銀の匙』 ①~⑥ 荒川弘・著
アニメ化が決定したという人気漫画。面白かった~。7巻が待ち遠しい!^^
12月に読んだ本/4冊

「寒いね」と 話しかければ 「寒いね」と 答える人の いるあたたかさ
これは、俵万智さんの場合ですね。私の場合はというと。。。
「寒いですね」 「寒いです、身も、心も。懐(ふところ)も」
これ、私の定番 「つかみ」 なんですけども(笑)。余計サブくなるって?
わはは、失礼しました。
しかし、この冬は寒いですね、冗談抜きで。。関東平野にお住まいの皆さん、
近年にない大雪だそうで、大変ですね。お足もとに十分お気を付け下さいませ。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
『知らないと損する不思議な話』 斎藤一人・著 ★☆☆☆☆
う~ん、、。最近こういう 「魔法の言葉」 系の啓発書、多いですね。
『みんな 「おひとりさま」 』 上野千鶴子・著 ★★★★☆
さすがは日本最強のフェミニストにして究極の個人主義者・上野センセイ。
ガッツリ読み応えのある一冊でした。
『七尾のために』 島本理生・著 ★★☆☆☆
時々がっかりさせられながらも、私が島本理生の読者でい続けているのは、
彼女が 「追憶の語り部」 であるからだと思う。ナラタージュ。
『ふくわらい』 西加奈子・著 ★★★☆☆
「絶望するな。僕たちには西加奈子がいる」 ピース又吉の至言。映画
『きいろいゾウ』 も楽しみです。そして、直木賞候補おめでとう! 結果
は、、、さてどうなりますか。
11月に読んだ本/5冊

寒いですね・・・。
今年も残すところあと4日です。28日まで仕事なので、残り3日で諸々片付け
なくては。。。がんばる
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
『自由さは人を自由にする つれづれノート(22)』 銀色夏生・著 ★★★☆☆
引き続き「つれづれノート」。さくちゃんはうちの子の一学年上なので、タイ
ムラグがちょうどよくて、参考になります。
『自分を選んで生まれてきたよ』 いんやくりお・著 ★☆☆☆☆
うーん、私はこの本に感動できなかった。
『クラウドクラスターを愛する方法』 窪美澄・著 ★★★★☆
赤裸々系作家、窪美澄さんの新作。読み終わった後で、涙がぶわっと溢れてきます。
窪さんの中で、いろんな感情がちゃんと発酵して、物語になってるんだと思う。無理
やり感が全くないもの。才能ある方だと思うので、頑張って書き続けて欲しい。
『ひらいて』 綿矢りさ・著 ★★☆☆☆
うーん、一人の女の子が、こんな風に落ちてくのを読むのは辛かった。
『督促OL修行日記』 榎本まみ・著 ★★★☆☆
電話の仕事って大変ですよね・・・。肉体労働、知的労働に加えて、感情労働って
いうのがあるそうです。顔が見えないと、居丈高になる人ってヤダよね。
でも、期待したほどではなかったかな。
10月に読んだ本/5冊

クリスマスも終わり、そろそろ一年のまとめの時期。なのに、まだ読書記録に
手間どっております^^;
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
『奇貸』 松浦理英子・著 ★★★☆☆
本作品でも、クィアな松浦理英子ワールドが展開されます。併録作も◎。
『AKB白熱論争』 小林よしのり/中森明夫/宇野常寛/濱野智史・著 ★★★★☆
私もAKBは好きですが(見てると元気になるので)、この方々の信者っぷりは潔い
ほど。同時に、中森明夫ってすごい人なんだなあって、改めて思いました。
『沈黙より軽い言葉を発するなかれ』 ★★☆☆☆
柳美里さんの対談集。
『しゅるーんとした花影 つれづれノート(21)』 銀色夏生・著 ★★★☆☆
20年以上読み続けていたつれづれシリーズですが、思うところあって一端離れま
した。しかし、やはり気になるので(特にさくちゃんが)、再開。でももう買っては
読まないよ。
『犬とハモニカ』 江國香織・著 ★★★☆☆
計算し尽くされた文体、選び抜かれた言葉のひとつひとつ。どこをどう切っても、
江国香織の世界。これはもう、「熟練のわざ」ですね。
9月に読んだ本/8冊
ところで、Tiger。行きましたよ! 先月末に。

平日の夕方に行けば、行列もなく入店できます。店内は混雑しているものの、
会計もスムーズでした。
私が買ったものは・・・。砂時計(3分計)、目覚まし時計、ウォールステッカー、
小物入れ。時計二つはあまりにもかわいかったので。ステッカーは、息子がBB
弾で穴を開けまくってくれた襖の補修に(涙)。てか小学生の頃から何年放置し
てたんですか?! って感じですけど(笑)。小物入れはね~、赤いフクロウさん
で、これがまたかわいいのなんの♪ クリスマスのオーナメントが多かったので、
また季節が変わったら行ってみたいな。
● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○● ○ ● ○ ● ○ ● ○
『生きる悪知恵 正しくないけど役に立つ60のヒント』 西原理恵子・著 ★★★★★
文句なしの★5つ! サイバラ先生、最高です。
『仙台ぐらし』 伊坂幸太郎・著 ★☆☆☆☆
う~ん、私はあまり惹かれるところがないエッセイだったなぁ。伊坂さんの小説、
まだ手つかずです。
『心に龍をちりばめて』 白石一文・著 ★★★★☆
この小説、かなりツボでした。相変わらず高学歴で美人な主人公と、その運命の
男、、って内容はベタなんですが。ハマったな~。
『永遠のとなり』 白石一文・著 ★★★☆☆
こちらは男の友情がテーマ。九州弁が、いいんですよね。
『桃栗三年 美女三十年』 林真理子・著 ★★☆☆☆
ここまでくると天晴れですよね。。。^^;
『桐島、部活やめるってよ』 朝井リョウ・著 ★★☆☆☆
映画の原作。女子高生の心理描写の巧みさにうなりました。映画はとにかく見応
えあり、今年の邦画ベスト作の一本。
『人生が用意するもの』 川上未映子・著 ★★★☆☆
川上さんのお子さんが男の子だったことに、すごく驚きました。なんだか勝手に
「女の子のお母さん」 なイメージがあったんですよね。
『きみはいい子』 中脇初枝・著 ★★★☆☆
「たとえ別れても、二度と会わなくても、一緒にいた場所がなくなってしまった
としても、幸せなひとときがあった記憶が、それからの一生を支えてくれる。ど
んなに不幸なことがあったとしても、その記憶が自分を救ってくれる」

平日の夕方に行けば、行列もなく入店できます。店内は混雑しているものの、
会計もスムーズでした。
私が買ったものは・・・。砂時計(3分計)、目覚まし時計、ウォールステッカー、
小物入れ。時計二つはあまりにもかわいかったので。ステッカーは、息子がBB
弾で穴を開けまくってくれた襖の補修に(涙)。てか小学生の頃から何年放置し
てたんですか?! って感じですけど(笑)。小物入れはね~、赤いフクロウさん
で、これがまたかわいいのなんの♪ クリスマスのオーナメントが多かったので、
また季節が変わったら行ってみたいな。
● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○● ○ ● ○ ● ○ ● ○
『生きる悪知恵 正しくないけど役に立つ60のヒント』 西原理恵子・著 ★★★★★
文句なしの★5つ! サイバラ先生、最高です。
『仙台ぐらし』 伊坂幸太郎・著 ★☆☆☆☆
う~ん、私はあまり惹かれるところがないエッセイだったなぁ。伊坂さんの小説、
まだ手つかずです。
『心に龍をちりばめて』 白石一文・著 ★★★★☆
この小説、かなりツボでした。相変わらず高学歴で美人な主人公と、その運命の
男、、って内容はベタなんですが。ハマったな~。
『永遠のとなり』 白石一文・著 ★★★☆☆
こちらは男の友情がテーマ。九州弁が、いいんですよね。
『桃栗三年 美女三十年』 林真理子・著 ★★☆☆☆
ここまでくると天晴れですよね。。。^^;
『桐島、部活やめるってよ』 朝井リョウ・著 ★★☆☆☆
映画の原作。女子高生の心理描写の巧みさにうなりました。映画はとにかく見応
えあり、今年の邦画ベスト作の一本。
『人生が用意するもの』 川上未映子・著 ★★★☆☆
川上さんのお子さんが男の子だったことに、すごく驚きました。なんだか勝手に
「女の子のお母さん」 なイメージがあったんですよね。
『きみはいい子』 中脇初枝・著 ★★★☆☆
「たとえ別れても、二度と会わなくても、一緒にいた場所がなくなってしまった
としても、幸せなひとときがあった記憶が、それからの一生を支えてくれる。ど
んなに不幸なことがあったとしても、その記憶が自分を救ってくれる」
8月に読んだ本/7冊
もうすぐクリスマスですね。

パンの研究所「パンラボ」のブログに、「シュトーレンを買うまでに気持ち悪く
なるほど悩みすぎるタイプの人少なくないのでは…。」 とありました。はい、
それは私です。
無印良品の 「ひとくちシュトーレン」 で昨年は大満足だったんだけど・・・。
その後に買ったケーキ屋さんのものは、ちょっと甘過ぎたなぁ。
タケウチにシュトーレンあるか、今度聞いてみよう。
▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △
『尾木ママの子どもの気持ちが「わかる」すごいコツ』 尾木直樹・著 ★★★☆☆
う~ん、期待したほどではなかったかな。。子育てって十人十色、この世に
ひとりとして同じ人間はいないわけだから。きっと 「答え」 はないのでしょうね。
『50歳を超えても30代に見える生き方 「人生100年計画」の行程表』
南雲吉則・著 ★★★☆☆
ごぼう茶は飲んでますよ♪ 特に体調が変わったとは思わないんですが。。
『岡崎京子の仕事集』 岡崎京子・著/増渕俊之・編 ★★★☆☆
『40歳の教科書 親が子どものためにできること』 モーニング編集部・編 ★★☆☆☆
この本、読んだこと自体を忘れてました(汗)。良い意見もたくさんあったと思う
のですが・・・。
『静子の日常』 井上荒野・著 ★★★★★
「最近読んだ中で、一番よかった」 と母が文庫本を送ってくれました。確かに!
井上荒野さん、初でしたが、また何か読んでみたいな。オススメあれば教えて下
さい。
『サラダ好きのライオン 村上ラジオ3』 村上春樹・著 ★★★★★
村上ラジオ、第三弾。一章ごとに 「小噺」 のような短い文章がついていて、
これがまたケッサク! 今までの村上ラジオの中でも、一番好きかも。
『ディア ピョンヤン ~家族は離れたらアカンのや』 梁英姫・著 ★★★★★
映画 『かぞくのくに』 の監督の自叙伝。この本を読んでいた頃、仕事が超キツ
かったのですが、寝る間も惜しんで夢中で読みました。大阪駅前第三ビルの音楽
喫茶 「スパニョラ」 には行ったことがあったので、ちょっと嬉しかった。

パンの研究所「パンラボ」のブログに、「シュトーレンを買うまでに気持ち悪く
なるほど悩みすぎるタイプの人少なくないのでは…。」 とありました。はい、
それは私です。
無印良品の 「ひとくちシュトーレン」 で昨年は大満足だったんだけど・・・。
その後に買ったケーキ屋さんのものは、ちょっと甘過ぎたなぁ。
タケウチにシュトーレンあるか、今度聞いてみよう。
▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △
『尾木ママの子どもの気持ちが「わかる」すごいコツ』 尾木直樹・著 ★★★☆☆
う~ん、期待したほどではなかったかな。。子育てって十人十色、この世に
ひとりとして同じ人間はいないわけだから。きっと 「答え」 はないのでしょうね。
『50歳を超えても30代に見える生き方 「人生100年計画」の行程表』
南雲吉則・著 ★★★☆☆
ごぼう茶は飲んでますよ♪ 特に体調が変わったとは思わないんですが。。
『岡崎京子の仕事集』 岡崎京子・著/増渕俊之・編 ★★★☆☆
『40歳の教科書 親が子どものためにできること』 モーニング編集部・編 ★★☆☆☆
この本、読んだこと自体を忘れてました(汗)。良い意見もたくさんあったと思う
のですが・・・。
『静子の日常』 井上荒野・著 ★★★★★
「最近読んだ中で、一番よかった」 と母が文庫本を送ってくれました。確かに!
井上荒野さん、初でしたが、また何か読んでみたいな。オススメあれば教えて下
さい。
『サラダ好きのライオン 村上ラジオ3』 村上春樹・著 ★★★★★
村上ラジオ、第三弾。一章ごとに 「小噺」 のような短い文章がついていて、
これがまたケッサク! 今までの村上ラジオの中でも、一番好きかも。
『ディア ピョンヤン ~家族は離れたらアカンのや』 梁英姫・著 ★★★★★
映画 『かぞくのくに』 の監督の自叙伝。この本を読んでいた頃、仕事が超キツ
かったのですが、寝る間も惜しんで夢中で読みました。大阪駅前第三ビルの音楽
喫茶 「スパニョラ」 には行ったことがあったので、ちょっと嬉しかった。
7月に読んだ本/6冊

この画像、「我が家の晩御飯」と言いたいところですが(笑)。こちらでランチ
をいただきました♪ おいし~~い!!
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
『アジア映画の森 新世紀の映画地図』 石坂健治ほか・監修 ★★★★★
すべての映画好きの皆さまにオススメします。力作。
『評伝 ナンシー関 「心に一人のナンシーを」』 横田増生・著 ★★★★☆
AKB総選挙を観ながら、ナンシーさんだったらこれをどんな切り口で語るんだろ
う、、と思ったものです。
『あなたの子どもを加害者にしないために 思いやりと共感力を育てる17の法則』
中尾英司・著 ★★★☆☆
著者のスタンスは、子は親の鏡、生まれつきのモンスターなどいない、親の育
て方が問題なのだ、というもの。
でもねえ。。『悪の教典』 のハスミンみたいな人間も、いると思うんだよねぇ。
『死をみつめて 中学生までに読んでおきたい哲学⑥』 松田哲夫・編 ★★★☆☆
アンソロジーなので、ちょっと好き嫌いにバラつきがあったかな。
『マンガのあなた SFのわたし 萩尾望都・対談集 1970年代編』 ★★★☆☆
モー様。神。
『ベスト・オブ・映画欠席裁判』 町山智浩/柳下毅一郎・著 ★★★★☆
面白かった。ずーーーっと読んでいたかった。
6月に読んだ本/6冊

遅ればせながら今年の読書の記録を・・・。ミシュラン方式(五つ星★が満点)
で、評価をつけてみました。しかし、、すでに忘却の彼方の本もあるなあ(汗)。
■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □
『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』 /福岡伸一・著 ★★★★☆
これは感想を書いています。福岡先生の文章、大好きです。美しい。。
『マドンナ』 /奥田英朗・著 ★★★★☆
これも面白かった~。トリみどりさ~ん、読んだよ~。
『孤母社会 ~ 母よ、あなたは悪くない!』 /高濱正伸・著 ★☆☆☆☆
今流行りの「花まる先生」だけど、お子さんが10歳以上のお母さんにはオス
スメしません。ウチは「手遅れ」だわ~と落ち込むだけ@自分です。
『どちらとも言えません』 /奥田英朗・著 ★★★☆☆
『なにかいいこと 自分をほどく知恵のことば』 /服部みれい・著 ★★☆☆☆
『大往生したけりゃ医療とかかわるな 「自然死」 のすすめ』 /中村仁一・著 ★★★★☆
この本もかなり面白かった。死生観が変わる、目から鱗の一冊。
僕らの短い永遠~『岡崎京子の仕事集』
映画『ヘルタースケルター』 の中で一番衝撃的だったのは、水原希子扮する
吉川こずえのセリフだった。
「モデルなんてみんな吐いてますよ、でなきゃあんな細いワケないじゃん」
映画鑑賞後、すぐに原作を読み返してみたけれど、こんなセリフはない。脚色
なのかと思ったら、そうではなかった。

漫画家・岡崎京子の創作活動をアーカイブした本書を読んでいて、吉川こずえ
が 『リバーズ・エッジ』 の登場人物だったことを思い出した。実は、私が持って
いる、つまり読んだことのある岡崎京子の作品は、『ヘルター~』 と 『リバーズ
・エッジ』 のみ。こちらも早速読み返す。
岡崎京子の最高傑作との誉れ高い『リバーズ・エッジ』 。昏い瞳の吉川こず
えがいる。
映画を観て原作を読まれた方は、是非こちらも併せて読んでみて下さい。痛
過ぎて、私自身は長い間封印していたのだけれど。これを読まずにいるのは、
もったいないかもよ?
「平坦な戦場で僕らが生き延びること」

( 『岡崎京子の仕事集』 岡崎京子・著/増渕俊之・編/2012・文藝春秋)
吉川こずえのセリフだった。
「モデルなんてみんな吐いてますよ、でなきゃあんな細いワケないじゃん」
映画鑑賞後、すぐに原作を読み返してみたけれど、こんなセリフはない。脚色
なのかと思ったら、そうではなかった。

漫画家・岡崎京子の創作活動をアーカイブした本書を読んでいて、吉川こずえ
が 『リバーズ・エッジ』 の登場人物だったことを思い出した。実は、私が持って
いる、つまり読んだことのある岡崎京子の作品は、『ヘルター~』 と 『リバーズ
・エッジ』 のみ。こちらも早速読み返す。
岡崎京子の最高傑作との誉れ高い『リバーズ・エッジ』 。昏い瞳の吉川こず
えがいる。
映画を観て原作を読まれた方は、是非こちらも併せて読んでみて下さい。痛
過ぎて、私自身は長い間封印していたのだけれど。これを読まずにいるのは、
もったいないかもよ?
「平坦な戦場で僕らが生き延びること」

( 『岡崎京子の仕事集』 岡崎京子・著/増渕俊之・編/2012・文藝春秋)
導きの書~『アジア映画の森 新世紀の映画地図』

この本を読んでいた時間は、まさに「至福の時」そのものだった。
ずっと以前に観た懐かしい作品、直近に観て衝撃を受けた作品。そんな様々
なアジアの国々の映画を追体験し、しばし甘い追憶に浸る。そして、観たい、観
たいと思いつつ、叶わないままになってしまっている映画を思い出させてくれる。
『オアシス』
『欲望の翼』
『ミウの歌』
『クーリンチェ少年殺人事件』 ・・・
そしてその膨大な情報量にもまして、感動的なのは書き手の方々の熱く、深
いアジア映画への思い。特に、香港映画を語る野崎歓氏が隠そうともしない極
私的な愛情の発露には、読んでいるこちらの頬も思わず緩んでしまう。ソフトカ
バーなので持ち重りすることはないが、本そのものがずっしりと湿潤で、微熱を
帯びているかのようだ。
四方田犬彦氏による特別寄稿(この「つかみ」がガツンと来ます)、野崎氏、松
岡環氏ら、本書の監修者5人によるアジア映画の現在形を語る座談会に続いて、
いよいよ「アジア映画の森」 へと分け入る。中国、台湾、香港から中央アジア、
東南アジアを経てインド、イラン、イスラエルからトルコまで。各国映画の総論
に始まり、監督論の合間にコラムが入る、読み易い構成もうれしい。
私はアジア映画にさほど詳しいわけでも、映画祭に出かけて行くほどのコアな
映画ファンでもない。けれど、映画って素晴らしい、映画ってやっぱり大好きだ
と、改めて思わせてくれた貴重な一冊だった。これからも(アジア映画も含めて)、
映画をたくさん観ていきたい。すべての映画好きの皆様に、一読推奨。
( 『アジア映画の森 新世紀の映画地図』 石坂健治ほか・監修/作品社・2012)