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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅

『羊飼いの暮らし イギリス湖水地方の四季』~God's Own Country#4

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 映画 『ゴッズ・オウン・カントリー』 の副読本として最高! という評判を聞きつけ、これは読まねば、と思った次の日に文庫版が出る!ラッキー♪とばかりに早速購入。

 私は知らなかったのですが、昨年(2017年)の単行本出版時に日経新聞などで書評が出て、評判になっていたらしいですね。文庫化されるのが早く、早川さん激推しの理由も読めばわかります。とてもとてもとても素晴らしい本でした。

   羊飼いの仕事の掟三カ条
  一. 自分自身ではなく、羊と土地のために働くこと。
  二. 「常に勝つことはできない」 と自覚すること。
  三. ただ黙々と働くこと。


 湖水地方といえば、日本ではまずピーターラビットでしょう。その生みの親、ビアトリクス・ポターも羊飼いだったことを今回初めて知りました。私たちが漠然と憧れる、風光明媚な景観はその土地を成すごく一部分でしかないのです。何百年にも渡って定住する土地への帰属意識と、家系(羊の系統)を守り続ける目的意識について。オックスフォード大を出て(ライオット・クラブのメンバーたちほどではないにしろ)望むならばどんな仕事にでも就けたであろう著者は、羊飼いであることへの迷いや屈託は一切ありません。ほとんど神話の一部のような祖父や先祖たちへの畏怖から、現実の厳しさまで。四季の出来事が語られ、最後の最後に、著者は自身の人生について改めて言及します。感動。

 映画の中で、ジョニーとゲオルゲがしていた仕事がほぼそのまま描写されています。牧羊犬だけは映画に登場しなかったのですが、サックスビー家は本当に小さな規模の農場だからなのかな? と思ったり。ゲオルゲが作った子羊のための 「ジャケット」 や、石垣作り、羊の出産を手助けすること、などなど。改めて、羊飼いって本当に大変な仕事だなと思うと同時に、酔っぱらっても毎日毎日早起きして仕事に出ていたジョニー、結構偉いじゃん、と思ったり。父と息子の確執についても、シビアに語られます。

 人間を 「迷える子羊」 と呼ぶなら、羊たちを導く羊飼いは 「神」 に近い存在なのでしょうか。著者が映画 『ゴッズ・オウン・カントリー』 をご覧になったのか、もしそうならどんな感想を持ったのか。とても興味があります。

( 『羊飼いの暮らし イギリス湖水地方の四季』 ジェイムズ・リーバンクス:著、 濱野大道:訳
                                     早川書房/ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
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テーマ : 海外小説・翻訳本
ジャンル : 小説・文学

2018-08-08 : GOD’S OWN COUNTRY : コメント : 0 : トラックバック : 0
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寡黙な人々~『ゴッズ・オウン・カントリー』#3

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 (過去記事) God's Own Country
          ゴッズ・オウン・カントリー
         ゴッズ・オウン・カントリー』#2

 ついこの間まで北イタリアの沼にいたのですが、気がつくとヨークシャーの丘にいました。ここは(人が少なくて)寂しい場所ですが、とても美しいところですよ。皆さん早く来てください。

 この映画、「セリフが少ないから英語字幕でも無問題」 と何処かで読んで海外版BDの購入を決めたのだけれど、実際に観ると 「セリフが少ない」 と言うよりは 「セリフのないシーンが多い」 という印象。英語(ヨークシャー語?)は全く聴き取れず、字幕はあっても単語がわからない(爆)。“ta” や “lad” は割とすぐにわかったのだけれど、“summat” がわからなかった・・・。最後の最後に 「・・・はっ! これは “some” では??」 と気付いたのだけど、“something” ですね多分。ゲオルゲのしゃべる言葉だけは聴き取れたよ~、ありがとうゲオ。

 そしてセリフだけでなく、登場人物もとても少ない(余計なお世話だが、予算もスタッフもとても少なかったのだろうと思う)。ジョニーとゲオルゲ、ジョニーの父と祖母(あと牛と羊)。父はとても厳しく、一人息子のジョニーに 「どうしてそこまで?」 と思うほどの冷たい視線を向ける。祖母も、確か一度も笑顔を見せない。その代わり、彼女が涙する場面はとても印象的で、胸を打つ。

 あの涙は 「息子に先立たれるかもしれない」 という恐怖や不安が流させたのだろうけれど、それだけじゃない。もう少し、いくつかの成分が含まれていたと思う。田舎での生活、農夫の妻として生きてきた自分の人生、去って行った息子の妻、母のいない孫息子。そして彼が見つけた恋。彼女は毎日毎日アイロンをかけながら、何を思っていたのだろう? 長い間蓋をしてきた様々な思いがあのとき溢れて、感極まったのだろうと思う。

 父も祖母も、ジョニーに対し決して愛情がないわけではない。ジョニーが山から戻ったとき、父は窓辺に置いた椅子に腰かけ居眠りをしていた。息子のことを案じ、ずっと外を見ながらバイクのエンジン音が聴こえるのを待っていたんだな、と思った。片やニコリともせずに、ジョニーに大切な大切なメモの切れ端を渡すおばあちゃん。きっとふたりとも人間関係に不器用で、口下手なんだろうな。そしてその性格は見事に、ジョニーにも受け継がれている。

 ジョニー、いつもはほとんどしゃべらないのに、ゲオルゲに思いを伝えようと、本当に頑張ったね。あれほど必死に、切実に言葉を探して。迷子の子どもみたいで、胸が締め付けられる。ゲオルゲも、きっと君を待っていたんだと思うよ。そうだよね、ゲオ?

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2018-07-29 : GOD’S OWN COUNTRY : コメント : 0 :
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自由と解放~『ゴッズ・オウン・カントリー』#2

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 (過去記事) God's Own Country
         ゴッズ・オウン・カントリー

 この映画を何日か観ないと落ち着かず、もう何度観ただろう。そして毎回、終盤は 「ジョニー、頑張って!!」 という気持ちになり、涙、涙で観終わる。エンディングに使われたパトリック・ウルフの 「The Days」 が頭を離れない。スローでメロウな曲調と、まるでこの映画のために書き下ろしたような歌詞。本当に素晴らしい作品だと思う。

 日本でも一般公開してほしい。しかしただそう願って、手をこまねいているだけではダメだと思った。一般人でも、SNSで自由に意見表明することができるこの時代。インターネットという窓は、全世界に開かれているのだ! 何か行動しなければ・・・。そこでいくつかの配給会社のHPに 「ご要望」 を送ることにした。

 この映画の凄いところ、全く新しいこの時代の映画だと感心させられるのは、物語のどこにも同性愛に対するフォビアがないこと。主人公のふたり、ジョニーとゲオルゲに同性愛者であることに対する屈託は全くないし、父も祖母も、ジョニーの恋心を極当たり前の感情として受け止めている(アレを発見して、黙ってトイレに流すおばあちゃん・・・さすがに詰まるよ! と思ったが)。私も、この映画をLoveStoryとして、何の違和感も持たずに観ている。主人公ふたりの会話の中には 「結婚」 という言葉も出てきて、同性婚が法的に認められた英国の、2010年代の映画であることを実感する。同時に 「よそ者」 に対する差別はあからさまに描かれ、現代の排他的な世相を表してもいる。

 反抗期の中学生並みに尖りまくっていたジョニー。おばあちゃんが(山へ行くのに)用意してくれた上着と手袋を放り投げる様は、気になる子の前でイキがる小学生のよう。そんな彼が恋をして、その幼さを残したまま柔和な顔つきに変わってゆく過程は、何度観ても感動しかない。頑なにキスを拒んでいたのに、おばあちゃんを追い出してゲオルゲの首に自ら抱きつき、キスをするジョニーはかわい過ぎて愛おしくて泣きたくなる。役者って、本当にすごい! 役の感情を生きて、それを過不足なく表現して、観る者を感動させるのだから。

 返事を下さった配給会社の方々、ありがとうございました。公開されるかどうかはまだわからないけれど、改めてお願いしたい。ゲオルゲがジョニーに見せてあげた、あの丘の上の風景を大きなスクリーンで観たいのです。彼らが聴いた風の歌を、私も聴いてみたいのです。自分が住む母が捨てた土地を、ジョニーはどうしても肯定的に捉える事ができなかったのだと思う。しかしあの朝、そこは美しく祝福された場所であると理解し、彼は自らを解放した。そして改めて、あの土地で生きることを選択したのだと思う。これもひとつの 「自由と解放」 の物語なのだ。

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2018-07-28 : GOD’S OWN COUNTRY : コメント : 0 :
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Fから始まる~『ゴッズ・オウン・カントリー』

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 GOD’S OWN COUNTRY


 英国・ヨークシャー。家族経営の小さな農場を営むジョニー(ジョシュ・オコナー)は、病身の父(イアン・ハート)と祖母(ジェマ・ジョーンズ)との三人暮らし。行き場のない空虚な毎日を半ば自暴自棄に過ごす彼の元に、ルーマニア移民の季節労働者・ゲオルゲ(アレック・セカレアヌ)がやってくる。

 本作は2017年に各国で公開され、絶賛を浴びたインディペンデント映画。2018年7月13日に、第27回レインボー・リール東京 ~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で日本初上映されたけれど、公開は未だ決まっていない。「英国版ブロークバック・マウンテン」 なんて評判を聞いたら、観ないでいられようか? US版BD、英語字幕にて鑑賞。初めて円盤を未見購入してしまった。少し前に 『君の名前で僕を呼んで』 のUS版BDを購入していたので、海外版の円盤を買うことに抵抗はなかった。

 「人は変わることができる」。どんな人間でも、やさしさで包み、傷を癒してくれる誰かに出逢うことによって変わることができる。そんな希望を強く強く感じさせてくれる作品だった。監督と主演の二人によると本作は 「Brexitに関する物語」 らしいのだけれど、それは傑作と呼ばれる映画が図らずとも時代性を帯びるということであり、歴史の文脈の中で後付けに定義されたレトリックに過ぎないだろう。

 「ウィンストン・チャーチル没後50年」 とテレビで語られる場面があるので、時代設定は2015年頃。空っぽの目をして、人生に向き合うことを恐れていたジョニー。前後不覚になるまで痛飲し、吐き気とともに目覚め、行きずりの f*ck(それはセックスですらない)で欲望を紛らわせていた彼の変化を、ジョシュ・オコナーが大胆かつ繊細な表情演技で見せてくれる。(彼は本当に凄いことを成し遂げていると思う。これ一作で大ファンになりました)

 どうしようもなく鬱屈したジョニーだけれど、彼は本質的には悪い人間ではない(そもそも、本質的に悪い人間、生まれつき悪い人間などいるのだろうか?)。それは、ジョニーが酪農仕事をする最初のシーン、妊娠した牛の背を撫でる彼の手の動きを見ればわかる。そして彼の孤独は、家を出た母に起因していることも。ゲオルゲに母を語るジョニーは、(世の男性のほとんどがそうであるように)母を責めない。「母さんはあんまり幸せじゃなかった、よく憶えてないけど」 と。

 そんなジョニーの孤独を感じ取り、傷を癒し、心を溶かしてゆくゲオルゲ。彼がまとう素朴なのにどこか謎めいた雰囲気、言葉少なな代わりに雄弁に語る瞳、弱きものたちに触れるその手の、やさしく繊細な動き。ジョニー同様、それらに私も痺れまくった。テーブルに花を飾り、パスタの味を調える彼の仕草の一つひとつが尊過ぎる! あまりにも完璧に素敵な人なので、「ルーマニアに残してきた妻子がいる設定だったらどうしよう」 と心配になるほどだった。

 彼らが最初に身体を交わす場面は暴力的なまでに強烈で、まさに 「f*ck」 ではあるが、それは絶対に必要な描写であったのだと、この映画を最後まで観れば納得する。身体を貪ることしか知らないジョニーに、ゲオルゲは互いを慈しむこと、触れ合うことの意味を教える。言葉ではなく眼差しと指の動きで導くその行為はまさしく 「makeLoveメイクラブ」 であり、欲望のままに相手を組み伏せる行為とは対極にある、崇高なまでに美しいシーンとして記憶に残るのだ。

 ジョニーが変わることで、そのやさしさは頑なだった父や祖母にも伝染する。主演ふたりはもちろんだが、父イアン・ハートと祖母ジェマ・ジョーンズの演技がまた素晴らしい! そして子羊が、子羊が・・・。あり得ないほどの可愛さと名演技で、私を腑抜けにする。

 風の音。二人きりの山で羊の世話をする青年。荒涼とした寂しく美しい風景。じゃれあう二人を遠くから眺める人物。焚き火。水浴びと水遊び。そしてシャツ、ではなくてセーター。まさに 『ブロークバック・マウンテン』 感満載であり、『ブエノスアイレス』 の残像も感じられる。二人が最後に交わすセリフはFワードでありながら伏線を回収し、更に感動を呼ぶという離れ業であり、2018年の№1キラーセンテンスと思われたcall me by your name. にも匹敵する。初監督・初脚本のフランシス・リー、恐るべし、なのだ(ちなみにあのセリフが日本語字幕でどう訳されていたのか、とても興味がある)。

 作り手が描きたいビジョンを明確に持ち、優れた俳優と優れた脚本でぶれない映画作りをすれば、たとえ低予算でも傑作になり得るのだと思う。この映画にはフランス文学もギリシア哲学も、ピアノもアプリコットもまばゆい夏の陽光もない。そこにあるのはただ切実な生活の厳しさと、美しいが過酷な労働が待つ大地だけ。しかしだからこそ、雲間から差すただ一筋の光が、ふたりの貧しき羊飼いへの祝福のように輝くのだ。『GOD’S OWN COUNTRY』 = 「神の恵みの土地」。この恋愛映画の極北と呼ぶべき作品が、日本で劇場公開されないことが何とももどかしく、歯がゆい気持ちでいっぱいになる。

 『ブロークバック・マウンテン』 日本公開から12年。大きなスクリーンで、日本語字幕で、サラウンドな音響で、ヨークシャーの光と風を感じてみたい。

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 (過去記事) God's Own Country
 
( 『ゴッズ・オウン・カントリー』 監督・脚本:フランシス・リー/
                         主演:ジョシュ・オコナー、アレック・セカレアヌ/2017・UK)

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2018-07-17 : GOD’S OWN COUNTRY : コメント : 0 : トラックバック : 0
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God's Own Country

           gods own country


  公式サイト

 2017年に各国で公開された、ヨークシャーが舞台の英国映画です。著名な俳優は出ていない低予算のインディペンデント映画のようですが、Rottentomatoes ではなんと 99%Fresh の高評価。サンダンスなど映画祭でもいくつか受賞しています。
 これもう、私、絶対、好きだと思う! とずっと気になり、観たいなぁと思っていたのですが・・・。北イタリアの沼にハマってすっかり忘れていました。 が。

 なんと、第27回レインボー・リール東京 ~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭 にて上映が決定したそうです。来月ですね♪ 観に行ける方は私の代わりに是非観て、盛り上げて来てください! その勢いで日本公開も決まるといいなぁ~。てか絶対全国公開してくれ!

 まぁ、私はどんな手を使ってでも観るつもりですが(決意)。

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2018-06-07 : GOD’S OWN COUNTRY : コメント : 0 :
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