『レディ・バード』
レディ・バード






 LADY BIRD


 2002年、カリフォルニア州サクラメント。カトリック系の私立高校に通う17歳のクリスティン(シアーシャ・ローナン)は、「文化のない」 この田舎町と、平凡な自分の名前が大嫌い。自らを 「レディ・バード」 と名乗り、東部への大学進学を夢見ていた。

 楽しみで待ち遠しくて待ち切れなくて、初日に鑑賞。音楽がジョン・ブライオンってすごく久しぶりな気がする。オールタイムマイベスト作のひとつ エターナル・サンシャイン のスコアが大好きなので、スタッフロールに彼の名前を見つけてうれしかった。この原題のレディバードって、てんとう虫の事ではないのですね。シアーシャ・ローナン、赤毛も似合うけど緑色が本当に似合う。大傑作 『ブルックリン』 以来、私の御贔屓女優さん。

 正直、この映画を観て一番強く思ったのは、、、「お金がない、って本当に嫌だな」 でした(夢がなくってすみません)。子どもに対して年がら年中 「うちにはお金がないの」 って言うのって、気が滅入る。しかしクリスティンの母(ローリー・メトカーフ)って医療専門職(ナース? ドクター? セラピスト?)なのに、そんなにお給料安いのだろうか。それでも、お金が無い? それが何? 奨学金とアルバイトでなんとかする、アタシは都会へ行くの!! と絶対にぶれないクリスティンのど根性が凄い。天晴れ。

 オープニング、礼拝に臨む大勢の生徒たちの中でもひときわ光り輝くティモシー・シャラメにときめくも、彼が扮するカイルはヤな奴だった。美し過ぎるティミーが、またそれにドハマリしていた(笑)。そして今作ばかりはルーカス・ヘッジズくんに一票だった。クリスティンと抱き合って泣くシーン、彼の最後の舞台のシーンで涙腺がゆるんで、それからの展開はもう、涙滂沱ですよ・・・。親友との諍いと和解、母との冷戦。父が架けてくれた橋。ニューヨーク。ブルース!!

 これは遂にメジャー・ヒッターとなったグレタ・ガーウィグの、故郷へのラブレターですね。故郷ってもちろんサクラメントのことだけど、両親、特に母親のことでもある。愛情があり過ぎて、反発し合う似た者母娘。ありがとうが言えない、素直になれないふたり。それを見守る父親がまた、、、深過ぎる。

 しかしこういう小品と呼ぶべき映画が評価されて、オスカー候補にもなるってなかなか、アカデミー協会も捨てたもんじゃないですね。刺さる人には刺さる、そうでない人、例えば、ずーっと地元にいて実家住みの人とかには、普通の映画かもしれない。私? 刺さり過ぎて瀕死でした。

レディ・バード2

↑ ↑ ↑ 悪いほうのティミー、カイルくん  ↑ ↑ ↑ 

 (おまけ) クリスティンの初体験のシーン。彼女がブラジャー外してないのが興醒めだったのですが、あれはレイティングの関係なのかも、と思いました。相手に言われたことは全てそのまま信じるクリスティンが、自分とダブって痛かったです(泣)。

 ( 『レディ・バード』 監督・脚本:グレタ・ガーウィグ/
         主演:シアーシャ・ローナン、ローリー・メトカーフ/2017・USA)
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[2018/06/10 00:10] | 映画 | トラックバック(1) | コメント(2) |
『海よりもまだ深く』
海よりもまだ深く2

 15年前に文学賞を受賞したきり、鳴かず飛ばずの小説家・篠田良多(阿部寛)は、妻・響子(真木よう子)にも愛想を尽かされ離婚。興信所で探偵をしながら糊口をしのいでいるものの、ギャンブル依存のために月一回の一人息子との面会日にも金策に苦心する有様。団地で独り暮らす老いた母(樹木希林)のもとへ、金の無心に赴くのだった。

 歩いても歩いても の姉妹編のような、是枝裕和監督の新作。樹木希林と阿部寛が演じる、親子の会話は絶品。いつまでたっても息子がかわいい母と、その母に甘えて自立できない男の哀しさ、情けなさが際立つ。「なりたかったものになれた?」 ほとんどの大人にとって、それは残酷な問いかけだろう。あの頃の未来に、僕らは立っているのかな・・・。

 しかし、泣く気満々だったにも関わらず、私は泣けなかった。樹木希林が放つ名言の数々に心揺さぶられ、阿部寛ってこんなに演技巧者だったのかと驚きつつも、是枝監督の目線の 「偏り」 が気に障って仕方なかった。

 正直、私はこの作品に感動し切れなかった。あまりにも身勝手で大人になり切れない良多に対して、女たち(特に母、元妻)がやさし過ぎる。虎の子の給料を競輪でスって、養育費を滞納して姉(小林聡美)の職場まで押し掛けて借金を頼む。最低。シングルマザーの響子にとって、経済は死活問題のはず。なのに新しい恋人(年収1500万!)に元夫の小説をdisられ、伏し目がちになるなんて、、、いやそれ良多の願望でしょう。

 元夫の実家に泊って 「お母さん」 を連発する響子、、、あり得ませんから。それにお母さん、いくら息子が心配だからって、元嫁をハメちゃいけません。自分の息子や夫や弟がこんなだったら、めっちゃ嫌な気分になると思う、私だったら。そんなやさしくなれませんって。ていうかね、シングルで子ども育てていたら、毎日がもう、必死なんじゃない? 今日明日の生活が大事で、「自分はなりたいものになれたのか?」 なんて、自問自答している暇はないですよ。いっそ良多が息子を引き取って、育てればいいのに。
  
 良多=監督の、母や妻や姉にはこうあって欲しい、いつまでも夢を追いかける自分をやさしく見守って欲しい、っていう甘えが根底にあって、ちょっと勘弁、だったなぁ。結局、この映画ってファンタジーなんだな、と思いました。ただ・・・。

 「寝たきりと、ポックリ逝って生きたまま夢に出て来る、どっちがいい?」
 「・・・寝たきり」

 この会話だけは、ほんとグッときたなぁ。どんな姿でも、生きていて欲しい。母に対するその感情には、私も共感します。

 ( 『海よりもまだ深く』 監督・原案・脚本・編集:是枝裕和/
        主演:阿部寛、真木よう子、池松壮亮、樹木希林/2016・日本)

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[2018/06/02 22:22] | 映画 | トラックバック(1) | コメント(2) |
『否定と肯定』
否定と肯定




 DENIAL


 ホロコースト否定論者に名誉毀損で訴えられたユダヤ系アメリカ人大学教授デボラ(レイチェル・ワイズ)。彼女は弁護団から、一切のコメント、意見表明を禁じられる。それが法廷戦術とはいえ、人並み以上に意志的な彼女が 「良心を委ねる」 ことに耐えられるのか。

 面白かった! これ超オススメです。実話の映画化。脚本がデヴィッド・ヘアなんですね。

 20年前に、既にこういった 「歴史修正主義者」 による裁判が行われていたとは。常識や社会通念、史実とされていることを改めて 「証明」 することの難しさ。ホロコーストの生存者だけでなく、死者の代弁者でもあろうとする主人公の、沈黙を強いられる苦痛。いや~、考えさせられます。

 ケンブリッジ卒、才媛の代名詞的な英国人女優レイチェル・ワイズ。彼女がアメリカンってキャスティングはちと気になったけれど、主人公を弁護する役どころの英国人俳優たちがもう、素敵素敵ステキ~~な面々。重鎮トム・ウィルキンソン、ツンデレ「アンソニー」アンドリュー・スコット、そして昨年のベスト台詞賞 "ミスターAfternoon" ことジャック・ロウデン!

 私は瞬間湯沸かし器なので、熱い志はあれど、頭と態度は常にso coooolな彼らに学ぶこと多し。沈黙を貫くこととか、批判するときは相手の顔を見ない、とか。「私はアメリカ人よ!」 と頭を下げることを拒否していたデボラも、判決を読み上げられる時には思わずお辞儀をしている。強気で勝気な彼女も、我を忘れるほど追い詰められていたことがよくわかる。

 この作品、私は昨年の12月に観たのだが、まだ上映中だったり、これから始まる地域もある。未見の方には、機会があれば是非観ていただきたい。今、この時代に生きる我々にとって必見作だと思う。

 誠実で勇敢な者たち、真実のために闘う者たちに勝利を!

否定と肯定2

 ( 『否定と肯定』 監督:ミック・ジャクソン/2016・UK、USA/
     主演:レイチェル・ワイズ、トム・ウィルキンソン、ティモシー・スポール)

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[2018/02/02 17:41] | 映画 | トラックバック(0) | コメント(0) |
『星空』
星空






 STARRY STARRY NIGHT


 両親の不仲に悩む少女シンメイ謝欣美(シュー・チャオ徐嬌)は、どこか影のある転校生チョウ・ユージエ周宇傑(リン・フイミン林暉閔)に惹かれる。

 版権が行方不明になっていたとかで、大阪アジアン映画祭での上映以来なんと5年ぶりに劇場公開された本作。観ている間の感情の振り幅は、さほど大きくはない。しかし駅までの帰り道、じんわりと涙が溢れる。

 『銀河鉄道の夜』 を彷彿させるファンタジックな作品世界は、絵本が原作と知り納得。そして主人公があの ミラクル7号 の子役だったとは! 光陰矢のごとし。
 グイ・ルンメイの登場に思わず目を見張る。ラストシーン、彼女の泣き顔の先には 「ずっと探していた」 その人がいたと信じたい。

 外れなしの台湾産青春映画。この作品はそれよりも少しだけ幼い、思春期の少年少女を描いた佳作。大好きな台湾映画がまた一つ増えてうれしい。しかし今年はクーリンチェに、タレンタイムに本作と、「アジアの逸品」 再発見の年ですね。

星空2

( 『星空』 監督・脚本:トム・リン林書宇/2011・台湾、中国、香港/
      主演:シュー・チャオ徐嬌、リン・フイミン林暉閔、グイ・ルンメイ桂綸鎂)

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[2017/12/12 21:46] | 映画 | トラックバック(1) | コメント(2) |
『南瓜とマヨネーズ』
南瓜とマヨネーズ

 ライブハウスで働くツチダ(臼田あさ美)は、売れないミュージシャンで無職のせいいち(太賀)と同棲中。ある日、彼女は昔の恋人ハギオ(オダギリジョー)と再会する。

 年に一度くらい、全くノーマークだったのに劇場予告で  「これ、観たい! 絶対!」 と思う映画がある。何故かいつも邦画なのだけれど、今年はこの作品だった。冨永昌敬監督の作品は初見。初日に鑑賞。スチールが川島小鳥、っていうのがいいよね。特別感がある。そして原作を読んでみたいと思う。

 音楽の夢に破れかけてくすぶる男と女。陳腐で小さい話で。男も女もどうしようもないんだけど、「女は過去の恋を引きずらない、なんてウソ。」 っていう惹句には共感できる。好き、っていう感情は、たったひとつじゃない。誰でも心の中に、無自覚にだけどたくさん持っているものだと思う。

 臼田あさ美は好きな女優さん。オダジョーは言わずもがな、ほとんど悪魔。そして最後に、全部持っていく太賀。音楽を生業とする話なのに、劇伴がほとんどなく、とても静かな映画だったことも憶えておきたい。音楽は静寂から始まる、ってこと、監督はわかっているんだね。

 ツチダは一度も音楽を聴かない。イヤホンを耳に差しもせず、彼女はずっと待っている。音楽が生まれるその時を。待って、待って、待ち続けて・・・。結局待てずに、恋は終わる。静寂の中にあるはずの音楽のカケラを、彼女は探し当てられなかった。

 ツチダは泣いた。アタシも、泣いた。泣くしかなかった。

 ( 『南瓜とマヨネーズ』 監督・脚本:冨永昌敬/2017・日本/
                  主演:臼田あさ美、太賀、オダギリジョー)

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[2017/11/14 05:53] | 映画 | トラックバック(3) | コメント(0) |
『彼女がその名を知らない鳥たち』
かの鳥

 自堕落な生活を送る十和子(蒼井優)は、15歳年上の陣治(阿部サダヲ)を不潔で下品だと毛嫌いしながらも同居していた。十和子には、8年前に別れた黒崎(竹野内豊)という忘れられない人がいたのだ。ある日、クレームの電話をした百貨店の担当・水島(松坂桃李)と会った十和子は、彼に黒崎の面影を見る。

 究極の愛を観た。これは 『あゝ、荒野』 と並んで今年の邦画のベストではないだろうか? 昨年のマイベスト映画 『湯を沸かすほどの熱い愛』 を観た後と、少し似た感覚。『凶悪』 の白石和彌監督、大傑作を撮りましたね。必見!

※以下、ややネタバレ

 原作は読んでいるはずなのだが、読み進むのが苦痛なほどの嫌悪感(主に陣治への)でいっぱいだった記憶しかない。しかし、その 「忘却」 にこそ意味があったとは・・・。常識的に観れば嫌な女で、人間のクズかもしれない十和子。そんな彼女に感情移入しまくり、あんな風になるのも仕方ないと思う自分は、原作を読み終わった瞬間から十和子に憑依していたのかもしれない。十和子が記憶を取り戻した辺りから、ラストまで涙滂沱、ほぼ嗚咽でもう、顔が大変なことになってしまった。暗転してからのあのセリフ・・・決め台詞というか、殺し文句というか・・・。間違いなく私は殺られてしまった。

 十和子と陣治の関係を、「反抗期の子と親みたい」 と思いながら観ていた。不貞腐れて文句ばかり垂れ流す十和子、何を言われてもどんな態度を取られても、ひたすら十和子に 「美味いもの」 を食べさせようとする陣治。そしてどんな罵詈雑言を浴びせた後でも、一緒に食卓を囲む。二人の関係に在る、理屈や損得を超えた 「繋がり」。謎めいてさえ見えるそれが、陣治の最後のセリフで腑に落ちるのだ。

 売れ過ぎの松坂桃李(同じく沼田まほかる原作 『ユリゴコロ』 にも出演していた)は、よく受けたと思うくらいの嫌な役。そして黒崎、この役に説得力がないとこの作品そのものが成り立たない重要な役、演じた竹野内豊が素晴らしい! 声、声よ~あの声! 黒崎に出会ったら、迷いなく私も、十和子と同じことをするだろう。

 阪堺電車、近鉄の駅、夕陽ヶ丘、あべ地下、既視感ある商店街。ロケ地が自分の生活空間とリンクしていて、少しドキドキする。

 それにしても、蒼井優は凄い女優だな~。肝の据わり方が違う。ラストシーンのクローズアップは、主演女優賞に値する表情だった。

 ( 『彼女がその名を知らない鳥たち』 
        監督:白石和彌/主演:蒼井優、阿部サダヲ、松坂桃李、竹野内豊/2017・日本)

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[2017/11/06 20:45] | 映画 | トラックバック(5) | コメント(4) |
『あゝ、荒野 後篇』
後篇

 (承前) 『あゝ、荒野 前篇

 「新宿新次」 「バリカン建二」 としてプロデビューした新次(菅田将暉)と建二(ヤン・
イクチュン)は、相変わらずトレーニング漬けの日々を過ごしていた。そして遂に、新次
は復讐を誓った裕二(山田裕貴)との対戦が決まる。 「新次、殺してもいいぞ」

 後篇を待ちに待った二週間。初日の初回に観て来ました。前篇は157分、こちらも
147分の長尺。しかし前篇と同じく長さは感じない。

※以下、ネタバレします

 ボクシング映画に外れなし、と言うけれど、ボクシングって本当に素晴らしい・・・
殴り合いなのに。「一番汚くて、一番美しい」 ものが白い四角いマットの上にある。
それはこの世界そのもの。人生そのもの。この国のかたち。

 でも、そこはあくまでも 「男たちの居場所」 なんだ。新次のもとを去る芳子(木下
あかり)の疎外感が、痛いほどわかる。拳に万感の思いを込めて、新次と繋がろう
とするバリカン。父の死の真相を知ってなおバリカンを 「兄貴」 「親友」 と呼び、
その思いを受けて立つ新次。宿命が絡み合い、孤独な魂はただゴングを待つ。燃
え尽きるまで。

 バリカンが恵子(今野杏南)に 「あなたとは繋がれない」 と言うシーン。あれは
やはり、そういう意味なのだろうか? バリカンを引き抜く二代目は 「いかにも」 
な人物に描かれているし、高級マンションに住まわせる、というのも 「囲う」 とい
う意味だろう。新次の血がついた包帯を、後生大事に持っている、というのも意味
深だし。

 キャストは皆演技賞もの。誰がどんな賞を受けても驚かない。高橋和也、本当に
いい役者になったなぁ。彼がまだ瑞々しかった 『ハッシュ!』 が懐かしい。木村
多江の 「殺せ!」 も凄い。でんでんとユースケも、味があるいいコンビ。ヤン・
イクチュンは言わずもがな、だけれど、やはりこの作品は日本の宝・菅田将暉あっ
てこそ! 演技者としてだけでなく、「いきもの」 としての彼に惹かれるのだ。

 「背負う」 シーンが何度かあるのが印象的。人は皆、何かを背負って生きていく
ものだから。

 しかしあの結末はモヤるなぁ。バリカ~~~~ン!!

 ( 『あゝ、荒野 後篇』 監督・共同脚本:岸善幸/2017・日本/
            主演:菅田将暉、ヤン・イクチュン、ユースケ・サンタマリア、でんでん)

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[2017/10/23 00:00] | 映画 | トラックバック(6) | コメント(0) |
『あゝ、荒野 前篇』
前篇

 東京オリンピックの翌年、震災から10年後の東京・新宿。少年院から出所したばかりの
新次(菅田将暉)は、自分を裏切った元仲間を襲い、返り討ちに遭う。そこに居合わせた
理髪師の建二(ヤン・イクチュン)とともに、新次は元ボクサーの堀口(ユースケ・サンタ
マリア)が営む歌舞伎町のボクシングジムでトレーニングを始める。

 寺山修二が遺した唯一の長編小説(未読です)を、今を時めく菅田将暉×息もできない
ヤン・イクチュンで映画化、しかも前・後篇で5時間超の長尺作品! 昔寺山修二の詩集
にドハマリした元・文学少女(笑)としては、観に行かずにいられよーか! それなのに、
全国で37館でしか上映していないとは何事? 大阪市内の上映は一館のみという。。目
を疑いましたよ、なんと勿体無い! もちろんムビチケを買って劇場鑑賞。

 でも、先行配信もしてるし円盤が来月1日には出るし、製作サイドは 「劇場で観て欲し
い」 などとは思ってないのですね・・・。しくしく(配信や映画の上映形態について、思う
ところは書き出すと長くなるのでまた改めて)。

 で、作品はと言うと・・・最高でした。エンドロール後に後篇の予告が流れるんだけど、
もう頭抱えましたよ、 「早く観せてくれ!(絶叫)」 って。私はこれ前後篇、5時間ぶっ
通しでも全然オッケーです。いやむしろ観たい。

 狂ったように饒舌で荒々しい新次と、吃音ゆえにか寡黙で引っ込み思案な建二。母
のないふたり。彼らの関係は対ではなく、友情とも呼べない。新次は建二を 「兄貴」 と
呼ぶけれど、兄弟のようでもない。同志でもない。敢えて定義はしないけれど、建二の
新次への強烈な思慕だけははっきりと感じ取れる。 『藍宇』 のオマージュ(?)かと見
まがうようなシーンもある! 多分新次は、建二にとって初めての 「ともだち」 だったの
かもしれない。

 鑑賞前は菅田将暉に目が釘付け、かと思っていたが、すっかり建二=ヤン・イクチュン
に魅了されてしまった。虐待されて父を 「捨て」 ながら、給料袋すべて父の枕元に置き、
手描きのノートにだけ本当の気持ちを吐露する、心優しい建二に。彼らとは真逆に母を
捨て、捨てた母と同じく春をひさぐ芳子(木下あかり)もまた、新次に惹かれ愛し合うよう
になる。

 今から数年後の近未来を描きながら、タブーに正面から斬り込んでいる脚本が潔く、作
り手の覚悟を感じる。奨学金返済という名目の経済的徴兵、原発事故と被災の問題、少子
高齢化による介護人材不足。登場人物は全て高潔とは言い難い、社会の底辺で蠢く人々
だが、彼らを決して悪者には描かない温かさも感じる。新次と建二を 「スカウト」 し、育て
ようとする堀口=ユースケ・サンタマリアの飄々とした存在感も得難い。彼が通うバー 「楕
円」 のシーンで、観ている私もほっと息がつけるようだった。あゝ、後篇が待ち遠しい!

 ( 『あゝ、荒野 前篇』 監督・共同脚本:岸善幸/2017・日本/
                  主演:菅田将暉、ヤン・イクチュン、ユースケ・サンタマリア)

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[2017/10/10 15:49] | 映画 | トラックバック(4) | コメント(2) |
『君の膵臓をたべたい』
君の膵臓をたべたい

 内向的な高校生・春樹(北村匠海)は、「共病文庫」 と表書きされた日記を拾う。そこに
は、同じクラスの人気者・桜良(浜辺美波)の秘密が綴られていた。

 ベストセラーになった原作は未読。予告には今ひとつ惹かれなかったけれど、劇場に行
ってきました。北村匠海と小栗旬は、応援したい俳優さんなので。両隣の高校生カップル
は涙、涙。私もうるうる。ガム、食べる。食べるよ!

 私も春樹のように、人と接することなく自分自身でいたい気持ちもありつつ、桜良のよ
うに誰とでも明るく、八方美人に接してしまうところがある。だから桜良と春樹がお互い
の違う部分に惹かれ、そうなりたいと願うことが・・・私には、ごく自然に思える。私の中
では、二人のその感情がいつもせめぎ合っているから。

 桜良は、もっと「辛い」って言ってもよかったのにね。しかし北川景子は・・・綺麗過ぎ
か!(笑)

 ( 『君の膵臓をたべたい』 監督:月川翔/2017・日本/
                      主演:北村匠海、小栗旬、浜辺美波、北川景子)

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[2017/09/11 20:53] | 映画 | トラックバック(3) | コメント(2) |
トムホ萌え!~『スパイダーマン:ホームカミング』
スパイダーマン:ホームカミング







 SPIDER-MAN: HOMECOMING


 NYに住む15歳の高校生ピーター・パーカー(トム・ホランド)は、憧れのアイアンマン
ことトニー・スタークに目を掛けてもらって有頂天。アベンジャーズの一員となるべく、
日々街を自主パトロールする日々だったのだが・・・。

 トム・ホランドかわええ・・・。ああ~~超かわいい! トムホ萌え! 新生スパイディ、
期待値高かったけど大満足!

 思えば、トムホを初めて観たのはナオミ・ワッツの息子役だった 『インポッシブル』。
次の 白鯨との闘い では最後まで生き抜いて 「おぬし、やるな?」 と思っていた。
この映画の公開前にはリップシンクでリアーナの 「アンブレラ」 を踊る姿がバイラル
になっていて(何回観たか、笑)、彼が舞台版 『ビリー・エリオット』 のキャストだった
と知った時にはもう・・・。期待値MAXですよ! それを軽く超えてくれました。よかった。

 バードマンのセルフパロディとか、椅子男もGJだったよね~。でもやっぱりこの映画
は、何よりもトムホのフレッシュな魅力爆発! を堪能すべきですよ。まさにビッグバン。
スター誕生。

 巷ではセクシー過ぎると話題だったマリサ・トメイ、こんな可愛い甥っ子とルームシェア
なんて夢じゃない? メイおばさんになりたい人生だった(笑)。

スパイダーマン:ホームカミング2

 ( 『スパイダーマン:ホームカミング』 監督・共同脚本:ジョン・ワッツ/
      主演:トム・ホランド、マイケル・キートン、マリサ・トメイ/2017・USA)

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[2017/09/09 08:32] | 映画 | トラックバック(3) | コメント(2) |
『夜明けの祈り』
夜明けの祈り





 LES INNOCENTES


 第二次大戦直後のポーランド。赤十字で医療活動に従事するフランス人医師マチルド
(ルー・ドゥ・ラージュ)の元へ、一人の修道女が助けを求めてやってくる。

 ポーランドの修道女と言えば、数年前アカデミー賞外国語映画賞を受賞したイーダ
あれは特別に好きな映画。こちらは観るのが辛い部分もある、女性性について考えさせ
られてしまう映画だった。『イーダ』 で主人公の叔母を演じていたアガタ・クレシャが、
修道院長役で出演している。彼女、ポーランドでは重鎮なのだろうか。

 危険を冒して修道女たちを支えるマチルドの献身に、胸が熱くなる。医師=お金が儲
かる職業、なんて認識を恥じる。生まれて来る命って、原題の通り何の罪もない 「無垢」 
なもののはず。「まず、赤ん坊の命を救わなければ」 というマチルド。対して、修道院長
の取った行動は・・・。彼女を見ていると、信仰や神に対するスタンスは ウィッチ と
変わらないと私は思ったな。

 実話に基づく物語。出産しても、全てを投げ捨てて自由と人生を取り戻そうとする者を
登場させ、そしてそのことを否定しないことに好感した。マチルドの微笑みに、救われた
気分。

夜明けの祈り2

 ( 『夜明けの祈り』 監督・共同脚本:アンヌ・フォンテーヌ/2016・仏、ポーランド/
      主演:ルー・ドゥ・ラージュ、アガタ・ブゼク、アガタ・クレシャ、ヴァンサン・マケーニュ)

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[2017/09/08 00:08] | 映画 | トラックバック(1) | コメント(2) |
 『ウィッチ』
ウィッチ






 THE VVITCH: A NEW-ENGLAND FOLKTALE


 17世紀、開拓時代のニューイングランド。共同体を追われた一家は魔女が住む
という森近くに転居する。長女トマシン(アニヤ・テイラー=ジョイ)が子守していた
末っ子の赤ん坊が突如姿を消したことを皮切りに、一家に不気味な影が差し始め
る。

 原題の 「WITCH」 、WではなくVVなのが妙に気になる。

 『スプリット』 のファニーフェイス、アニヤ・テイラー=ジョイの出世作。昨年末に
話題になった 『ドント・ブリーズ』 を観逃して(てか観る勇気が出ず)、結局WOW
OWで鑑賞。怖いは怖いが、「やっぱホラーは劇場で観てナンボ!」 とこちらは劇
場へ。リーブルで観るときは最前列を取るのだけど、ホラー耐性ヤバめゆえ最後
列へ。

 色の無い(鈍色の)風景。音楽(効果音?)が煽る気満々で一瞬興醒めしたが、
全てが不気味としか言いようのない展開に目を逸らしたいのに引き込まれる。
あの双子! 黒ヤギ! 母の視線、父の説教、弟の性の目覚め。そして・・・。

 結局誰が 「魔女」 だったのか?

 開拓期という過酷な時代、辛い生活を強いられる人々の心の拠り所としての
神や信仰。それらが反転したとき 「魔女」 が生み出されるのではないかな。
最後列で観て正解でした。

ウィッチ2

 ( 『ウィッチ』 監督・脚本:ロバート・エガース/2015・米、英、加、ブラジル/
     主演:アニヤ・テイラー=ジョイ、ラルフ・アイネソン、ハーヴィー・スクリムショウ)

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[2017/09/06 08:24] | 映画 | トラックバック(1) | コメント(0) |
『ブレンダンとケルズの秘密』 【字幕版】
ブレンダンとケルズの秘密




 THE SECRET OF KELLS


 9世紀のアイルランド。高い塀に囲まれた修道院で暮らす少年僧ブレンダンは、
「ケルズの書」 を完成させるため、インクの材料となる植物の実を探して森へ入
る。

 「ケルズの書」 って知っていますか? 恥ずかしながら、私は全く知らなかった。
この映画のことも全くノーマークだったのだけど、尊敬するブロガーさんの 「観逃
し厳禁リスト」 に入っていたのでチェック。すると昨年観逃して悔しい思いをした 
『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』 の監督のデビュー作で、アカデミー賞にもノミ
ネートされた作品らしいではないか! お盆休み後半、しつこい風邪はもう治った
ことにして、久しぶりのシネ・リーブルへ。

 ちなみに、この日は 「リーブルで4本観る!」 と意気込んで行ったのだけど、1本目の 『ファウンダー』 
がまさかの満席で撃沈(笑)。しかしグランフロントの紀伊国屋で 「ケルズの書」 関連展示があると知り、
気を取り直して向かいました。この世に本屋さんがあってよかった。


 色彩と光のつづれ織りにクラクラする。スビログラフで描いたような、紋様のよ
うな曲線も素晴らしい! 字幕版で観たけれど、画に集中するために吹替えで観
てもよかったかも? と思ったほど。「世界で最も美しい本」 と呼ばれる書の物語
にふさわしい、美しい美しいアニメーション。

 オオカミの妖精・アシュリンには 『千と千尋の神隠し』 のハクを思い出すし、高
い塀といえば進撃だし。アニメって、世界中の作家たちがそれぞれの作品を尊重
しながら影響を与え合っているのだなぁ、としばし感動。これ実写化するなら、ブレ
ンダンは赤毛のアイリッシュ、ドーナル・グリーソンに演じてほしいな、と思っていた
らお父さんのブレンダン・グリーソンがボイスキャストにいた(笑)。

 この日観てるのは大人ばっかりだったけど、こういう映画こそ小さな子どもたちに
観て欲しい。ストーリーは理解できなくても、美しい色彩や曲線の印象はちゃんと
残るんじゃないかな。

ブレンダンとケルズの秘密2

 ( 『ブレンダンとケルズの秘密』 監督・原案:トム・ムーア/
     VC:エヴァン・マクガイア、ブレンダン・グリーソン/2009・仏、ベルギー、アイルランド)

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[2017/09/04 20:51] | 映画 | トラックバック(0) | コメント(0) |
人を壊すもの。~『ヒメアノ~ル』
ヒメアノール2

 ビル清掃のアルバイト青年・岡田(濱田岳)は、先輩の安藤さん(ムロツヨシ)
から 「僕の運命の女性を紹介する」 と言われる。安藤が見染めたカフェ店員
ユカ(佐津川愛美)は、金髪の不気味な男(森田剛)に付きまとわれていた。岡田
は、その男が高校の同級生で、いじめられっ子だった森田であることに気付く。

 監督の吉田恵輔、主演の森田剛とも、作品を鑑賞するのは初めて。そしてとて
も驚かされた。特に森田剛は、(J)事務所的には大丈夫だったのだろうか? と
こちらが心配になるほどの猟奇的な演技を披露している。V6といえば岡田くんや
イノッチに目が行くので、今までほとんど彼のことを意識したことがなかったのだ
が、こんなポテンシャルを持った俳優さんだったとは・・・。(J)ってホント、あなど
れない。凄い。必見。

 前半のライトなラブコメ調から、後半のシリアスなバイオレンス描写の落差た
るや・・・。闇夜に森田の姿が浮かび、心を掻き乱すような音楽とともに現れる
タイトルバック。その瞬間、ああここから物語が始まるのだと、それまではアヴァ
ンタイトルだったのだと気付き、震えるような寒気を覚える。森田の佇まいには、
何をしでかすかわからないような、過去も未来もない、刹那にしか生きていない
者の 「虚無」 が取り憑いている。

 破壊と快楽(バイオレンスとセックスのカットバック!)が絶え間なく映し出され、
過去が回想されるうちに、森田が何故こういう生き方をしているのか、人生を諦
めているような、絶望しているような、生きながら 「死んでいる」 ようなのかが
わかってくる。彼を壊したものが何だったのか。同情も肯定もできはしない、ただ
辛く、苦しい思いが残る。

 ※ 以下、ラストに触れています ※

 暴虐の限りを尽くし、怪物となった森田の心を呼び覚ましたのは白い犬だった。
生まれつきの悪者など、いないと信じたい。

◆◆◇ ◆◆◇ ◆◆◇ ◆◆◇ 

・ムロツヨシの超音波は笑えるが、森田剛の怪演の前ではいささか分が悪い。
・佐津川愛美、ただのブリっ子じゃありません!
・濱田岳は還暦過ぎても高校生役、できるんじゃないだろうか・・・。
・近年の邦画でのリリー・フランキー枠を、大竹まことが演じている。

 ( 『ヒメアノ~ル』 監督・脚本:吉田恵輔/
        主演:森田剛、濱田岳、佐津川愛美、ムロツヨシ/2016・日本)

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[2017/06/17 12:32] | 映画 | トラックバック(2) | コメント(6) |
『スウィート17モンスター』
スウィート17モンスター




 THE EDGE OF SEVENTEEN


 17歳の高校生ネイディーン(ヘイリー・スタインフェルド)は、口が悪くて劣等
感の塊。イケメンでスポーツ万能、「勝ち組」 な兄ダリアン(ブレイク・ジェナー)
とは犬猿の仲なのに、たった一人の親友クリスタ(ヘイリー・ルー・リチャードソ
ン)が、その兄と付き合うことになり・・・。

 うちにも一人いますから。ビター17モンスターが(笑)。

 思春期って、こういう感じだよね~、と思う。自意識過剰で妄想激しくて。傷
つくことに敏感で。甘えたいくせに意地張って。本音は誰にも言えなくて。しか
しこういうモンスターが家にいたら、親は大変だよね、、、ってウチにもいるわ
(爆)。

◆◇  ラストシーンに言及しています


 不安なんだと思う。いつまでも子どもではいられないし、いたくもない。親に
干渉されたくはないけど、自立できるわけもない。自分は何者なのか、どんな
価値があるのかもわからず、答えは何処にもないし誰も教えてくれない。一体、
何をどうすればいい?! って。でもネイディーンにはいたんだよね、ミスター・
ブルーナー(ウディ・ハレルソン)が。正直、ウディ・ハレルソンこんな演技でき
るんだ! って驚きだった。

 ダリアンが 『エブリバディ・ウォンツ・サム!!』 (最高! リンクレイター万歳!)
のルーキーで眼福♪ 彼、マット・ディロンに似てると思ったけど本作ではジェイ
ク寄りだったわ~(嬉)。

 しかし、ネイディーンがクラスメイトの韓国系男子のでっかいお家を見て 「な
んや、お金持ちやん」(関西弁に意訳してます) って言うところ、最高だった(笑)。
サイバラ先生が喜びそう。そうそう女の子たち、お金は大事だよ~。

 ラストシーンはネイディーンの、笑顔のクローズアップ。アイデンティティの危機
にさらされ、自己崩壊スレスレだった主人公が映画に救われるなんて・・・。
思えば自分だって、彼女と似たような高校時代を過ごしてたな。エンドロールの
間中、涙が出て仕方ない元セブンティーンなのであった。

スウィート17モンスター2

 ( 『スウィート17モンスター』 監督・脚本:ケリー・フレモン・クレイグ/
    主演:ヘイリー・スタインフェルド、ウディ・ハレルソン/2016・米、中)

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[2017/06/14 21:26] | 映画 | トラックバック(2) | コメント(0) |
キャプテン・ファンタスティック~『はじまりへの旅』
はじまりへの旅






 CAPTAIN FANTASTIC



 人里離れた森の中で6人の子どもたちと自給自足で暮らすベン(ヴィゴ・モーテ
ンセン)は、入院中だった妻が自ら命を絶ったことを知る。母親の死を嘆き悲しむ
子どもたちを連れ、ベンは妻の故郷を目指すのだが・・・。

 アカデミー賞主演男優賞ノミネート、カンヌ映画祭 「ある視点」 部門監督賞
受賞作。一応、ヴィゴファンですから公開初日、映画の日に鑑賞。長男ボウ(ジョ
ージ・マッケイ)が 『パレードへようこそ』 の気弱な兄ちゃんだ! と気付いて、
のっけからめっちゃテンション上がった(笑)。

 どちらかと言うと、各方面大絶賛、批評家が 「五千億点」 とか公言するよう
な映画より、賛否両論ある映画のほうが好きかもしれない。この映画もそう。し
かしこの邦題では、この映画のよさが全く伝わってこない。いっそ原題そのまま
のほうがいいのでは? と思うレベルで残念。

 ベンも亡くなった妻も、相当頭のよい人だったんだろうな。しかもオールマイ
ティに。芸術もスポーツも科学も、全てバランスよく子どもたちに体得させるな
んて、並大抵ではないですよ。もちろん子どもたちも皆、聡明で健康だったの
だと思う。

 しかしね、、、家族以外と接触することなく育つっていうのは、やっぱり無理
があるんじゃないかと思う。スーパーでドロボウするのを 「○○を救え!」 っ
ていやいやアナタ、それ犯罪ですから(汗)。一番違和感があったのは、ベンが
子に合衆国憲法を暗唱させるところ。イタイケな幼子が、「合衆国憲法修正第何
条ハ、、、」 って気持ち悪いよ! 正気か? 「チョムスキーの誕生日を祝うなん
て、変だよ?」 って言う次男クンの気持ち、私はわかるなぁ。

 その次男の反発や、長女の大怪我があり、ベンの信念も揺らぎ始める。この辺
りのヴィゴの演技がもう、素晴らしいのです・・・。子育てに悩まない親、後悔のひ
とつもしない親なんて、私はどうかと思うね。いくら自らの遺伝子を継ぐとはいえ、
子どもは自分とは違う、一人の人間なのだから。親の思い通りになんて、育てら
れるわけがない。そこに至る苦悩の表情がもう、、、素敵すぎるの! しかも柄の
シャツに真っ赤なスーツって(笑)。ヴィゴって特別な種別だよね、人類の。ヴィゴ
属的な。

 最終的にこの家族は町に下りて生活することを選ぶのだけど、学ぶ場所が森か
ら学校に変わっただけ。スクールバスが到着するまでの数分間、食卓の風景を捉
えたラストショットが忘れられない余韻。上の娘ふたりが赤毛なのもナイス。色彩が
美しい映画だったな、緑に映えてね。

◆◇  ◆◇  ◆◇  ◆◇  ◆◇  ◆◇  ◆◇  ◆◇  ◆◇  ◆◇  

 実は、この映画にはある衝撃を受けた。それはアカデミー賞授賞式。主演男優賞
にノミネートされて最前列に座るヴィゴの隣に、ロンゲで小太りのオッサン(失礼)
が。親しげにヴィゴの肩に手をまわして、テンション高め。そう、JBみたい。「誰?」 
後で知ったらそのオッサン(失礼)、なんとヴィゴの息子さんなんだって・・・。
えええええ~??? ちょ全然似てないんですけど。。。

 お~い、ヴィゴの遺伝子や~い。どこ行った?

はじまりへの旅2

 ( 『はじまりへの旅』 監督・脚本:マット・ロス/2016・USA/
      主演:ヴィゴ・モーテンセン、フランク・ランジェラ、ジョージ・マッケイ)

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[2017/06/11 21:42] | 映画 | トラックバック(4) | コメント(2) |
女たちよ~『20センチュリー・ウーマン』
20センチュリー・ウーマン





 20TH CENTURY WOMEN


 1979年、カリフォルニア州サンタバーバラ。55歳のシングルマザー、ドロシア
(アネット・ベニング)は、思春期を迎えた15歳の一人息子ジェイミー(ルーカス・
ジェイド・ズマン)と向き合うことに限界を感じていた。

 初日にシネコンで鑑賞。昼の回だったのに、観客が5人だったことに衝撃(?)
を受けた。しかも全員おひとり様。確かにこの作品、ミニシアター案件ではある
と思うのだがあまりに寂しい。アカデミー賞で脚本賞にもノミネートされていたの
にね。セリフがいいし、登場人物それぞれの人生を俯瞰する構成もいい。マイク
・ミルズのフェミニズム講座、そしてTシャツ映画でもある。


 母は何故、かくも息子を愛するのか? 或いは息子は何故、かくも母を想うのか。


 才人マイク・ミルズの前作 『人生はビギナーズ』 はとても素敵な映画だった。
確かその年のマイベスト10にも入れたと思う。前作では父が、本作では母が描か
れている。そしてもちろん、本作も今年のベスト作の一本になりそう。

 正直、、、身につまされる。私はドロシアほど(精神的にも経済的にも)自立した
女性ではない。しかし、一人息子の思春期に戸惑い、悩み、心配が尽きないと嘆
く姿は、自らを鏡で見ているようだった。

 アネット・ベニング、年とったなぁ。そしてそれを全く隠さないところが潔い。売れっ
子エルちゃん。すっかり脇役界の大御所(?)となった感のビリー・クラダップ兄貴。
そして正直、あまり好きな女優ではなかったグレタ・ガーウィグが今回、赤毛でいい
感じ。キャストがいい味。

 実は初めて知ったけど、マイク・ミルズってミランダ・ジュライと結婚しているんです
ね! ビックリ・・・。すごいアート系カップル。

 近頃は、反抗期のない子どもが増えているらしい。ずーーーっと可愛く、聞き分け
のいいままでいてくれたら、子育ても楽だろうなぁ。息子に嫌われているんです、と
悲しがっていたら、「今はそう見えても二十歳過ぎたら、男の子は母親のことが愛お
しくなるものだよ」 と言ってもらったことがある(慰めてくれただけかもしれないけど)。
自分が死んでから、息子にこの映画のように回想してもらえたら・・・。最高だよね。

20センチュリー・ウーマン2

 ( 『20センチュリー・ウーマン』 監督・脚本:マイク・ミルズ/
     主演:アネット・ベニング、ルーカス・ジェイド・ズマン/2016・USA)

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[2017/06/06 22:24] | 映画 | トラックバック(3) | コメント(2) |
あなたの人生の物語~『メッセージ』
メッセージ






 ARRIVAL


 ある日突然、巨大な未確認飛行物体が地球上の12の地点に現れる。言語学者
のルイーズ(エイミー・アダムス)は軍に請われ、理論物理学者のイアン(ジェレミー
・レナー)とともに飛行物体内部の生命体と接触を試みる。

 感動に打ち震えた。ノン・ゼロサムゲーム。


 ドゥニ・ヴィルヌーヴ、、、やはり彼の映画は凄い。観終わってすぐに原作(『あな
たの人生の物語』by テッド・チャン)を読んだが、この映画化は天晴れと言うしか
ない。


 そう 私たちは知っている
 私たちがどこから来て どこへ行くのかを
 何を見 何を聴き 何を為すのかを
 
  ”Come back to me.”

  Hannah.

  円環。
 
 
 私たちの思考、知覚は 「言語」 に規定されている。私たちの世界では、時間は
「流れてゆく」 もの。しかし彼らの世界では、時間は 「そこにある」 もの。


 それでも人生に 「Yes」 と言う。


 ジェレミー・レナーが、今まで観たどの映画より素敵に見えた。エイミー・アダムス、
今回は惜しかったけどいつかはオスカー、獲れますように。

メッセージ2

 ( 『メッセージ』 監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ/2016・USA/
                       主演:エイミー・アダムス、ジェレミー・レナー)

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[2017/06/05 07:17] | 映画 | トラックバック(6) | コメント(8) |
破壊(と再生)~『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』
雨の日は会えない、晴れた日は君を想う






 DEMOLITION


 突然の事故で妻を亡くしたエリート銀行員のデイヴィス(ジェイク・ジレンホール)。
しかし、彼は自分に妻の死を悲しむ感情がないことに気づく。


 この映画をヒースに見せたかった。


 ジェイクとナオミ・ワッツ×クリス・クーパーとかもうね、、、涙腺崩壊ですよ。

 ジャン=マルク・ヴァレの映画はやはりいい。どん底から這い上がる、逞しくも
繊細な主人公たち。映像は登場人物のクローズアップが多いにも関わらず、押
しつけがましさがなく、やわらかい。ノクターンで始まるサウンドトラックも最高。

 思春期真っ盛り、中二病全開のクリス(ジュダ・ルイス)がかわいい。そしてこ
の映画、実は手紙の映画でもあるのだった。テキストメッセージが当たり前の
時代、手書きの文字が登場する映画は今や貴重かも。Warmest regards,

 しかし相変わらず邦題は酷いですね。(個人の感想です)

雨の日は会えない、晴れた日は君を想う2

 ( 『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』 監督:ジャン=マルク・ヴァレ/
      主演:ジェイク・ジレンホール、ナオミ・ワッツ、ジェダ・ルイス/2015・USA)

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[2017/06/04 21:12] | 映画 | トラックバック(3) | コメント(0) |
『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
マンチェスター・バイ・ザ・シー








 MANCHESTER BY THE SEA


 ボストン郊外。アパートの便利屋として世捨て人のように孤独に生きるリー
(ケイシー・アフレック)のもとへ、兄ジョー(カイル・チャンドラー)の訃報が届
く。帰郷したリーは、兄が遺した息子パトリック(ルーカス・ヘッジズ)の後見
人に、自分が指名されていることを知る。

 マンチェスター・バイ・ザ・シーは、マサチューセッツ州の北岸に実在する
港町。5月13日、公開初日に鑑賞。

 ”ケイシー、ケイシー、ケイシー・アフレック”. (by ケネス・ロナーガン)

 『ムーンライト』 よりも 『ラ・ラ・ランド』 贔屓の私だけれど、今はこの作品
がアカデミー賞作品賞でもよかったのでは? と思っている。小さな、しかし
美しい港町の海と空が、いつまでも胸に残る名作。思い返すだけで、涙が溢
れてくる。

◆◇ ラストシーンに言及しています 



 今までずっと、なぜ芸術作品には 「死」 を扱ったものがこれほど多いのか、
自分は理解できていなかったと思う。しかし、今ならわかる。人は、ごく身近な
愛する者の死を受け入れ難く、「なぜ?」 と自問し続けずにはいられない。答
えなどないとわかっていても。だから非日常であり、現実ではない芸術に、救
いや共感や、癒しを求めるのだと。(これは 「芸術」 を 「宗教」 と言い換える
こともできるだろう。私は映画という芸術を 「信仰」 しているのかもしれない)

 ”I can't beat it. I can't beat it.

 終盤、リーが絞り出すこのセリフはある意味衝撃であり、救いであり、真理で
あると思う。乗り越えられない、、乗り越えられるわけがない! それでも時は
流れ、人生は続く。「死なないで!」 リーの元妻ランディ(ミシェル・ウィリアムズ)
の慟哭。そう、生きていてくれるだけでいい。

 永遠の弟キャラ、ケイシー・アフレック。本作のキャストは全て素晴らしいと感
じたが、特にケイシーは各演技賞総なめも納得の演技。しかしオスカー授賞セ
レモニーで、なぜか微妙な会場の雰囲気を感じてしまった。そしてそれが、彼が
過去に起こしたスキャンダルが原因であることを知るのに、さほど時間はかから
なかった。

 この映画が描いている通り、「起きてしまったこと」 を 「なかったこと」 にする
ことはできない。人生には乗り越えられない悲劇も、生涯背負わなければならな
い過ちもあるだろう。全ての俳優が、善良で模範的な社会人であるべき、とは必
ずしも思わない。それでもケイシーには、自分が数々の栄誉にふさわしい人間
であると、これからの人生と、その演技で示してほしいと思う。

マンチェスター・バイ・ザ・シー2

 ( 『マンチェスター・バイ・ザ・シー』 監督・脚本:ケネス・ロナーガン/
     主演:ケイシー・アフレック、ミシェル・ウィリアムズ、ルーカス・ヘッジズ/2016・USA)

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[2017/06/01 00:00] | 映画 | トラックバック(4) | コメント(8) |
Hello, stranger/Happy Together ~『ムーンライト』
ムーンライト





 MOONLIGHT


 "In moonlight, black boys look blue".


 マイアミの貧困地区に暮らすシャロン(トレヴァンテ・ローズ、アシュトン・サン
ダーズ、アレックス・ヒバート)は麻薬中毒の母(ナオミ・ハリス)に育児放棄され、
学校ではいじめられていた。学校帰りに逃げ込んだ廃屋で、シャロンはドラッグ
・ディーラーのフアン(マハーシャラ・アリ)に助けられる。

 第89回アカデミー賞作品賞受賞作。公開日翌日に鑑賞。美しく切ない映画で
ある。あまりにも純情な初恋を描いた映画である。地味ながら、タブーに切り込
んだ勇敢な映画でもある。しかし、私が観た直後の感想はこうだ。

 「こ、これは・・・。あまりにも、あまりにも 『ブエノスアイレス』 じゃないか!」

 バリー・ジェンキンズ監督自身がウォン・カーウァイの影響を公言しているらし
いが、正直 「これがオスカーなら、王家衛は3、4本オスカー像手にしてないと
おかしくない?」 と思った。エンドロールの曲も、いっそ「Happy Together」 
にすればよかったのに、とか。実際、観終わってしばらく私の頭の中では、あの
曲がグルグル回っていた。もちろん、フランク・ザッパで。

 Imagine me and you,
 I do,
 I think about you day and night
 It's only right,
 To think about the boy you love
 And hold him tight,
 So happy together…

 まぁウォン・カーウァイはカンヌに愛されていたから、アカデミーにはスルーさ
れていたのだろうけれど。単にマーケティングの問題なのだろうというのは重々、
わかっているけれども。

 短い出演時間ながら、マハーシャラ・アリの存在感はこの作品に最後まで深い
余韻を残す。授賞式での紳士的な佇まいにはときめいた。しかしそれでも、作品
賞は 『ラ・ラ・ランド』 に授けてほしかったなぁ。

ムーンライト2

 ( 『ムーンライト』 監督・脚本:バリー・ジェンキンズ/2016・USA/
      主演:トレヴァンテ・ローズ、アシュトン・サンダーズ、アレックス・ヒバート、
                 マハーシャラ・アリ、ジャネール・モネイ、ナオミ・ハリス)

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[2017/05/31 07:33] | 映画 | トラックバック(2) | コメント(4) |
夢追い人~『ラ・ラ・ランド』
ララランド





 LA LA LAND


 LAで女優を目指し、オーディションを受け続けるウェイトレスのミア(エマ・
ストーン)は、ピアノマンのセブ(ライアン・ゴズリング)と出逢う。彼は 「瀕死
の」 ジャズを愛し、好きな時に、好きな曲を、好きなように演奏できる自分の
店を開くという夢を持っていた。

 公開日翌日に1回目、観た直後に買ったサントラを聴き込んで、2週間後に
IMAXで2回目。そして5月の終わり、ムーブオーバーしたミニシアターで3回
目を鑑賞。ブログを始めてから、映画館で3回以上観た映画は必ず年間マイ
ベストワンになっている。だから今年も本作がベスト1はほぼ確定ですね(笑)。 
理由は、、、

 この映画最高じゃないですか? はっきり言って。

 冒頭、ハイウェイのミュージカルシーンで心掴まれ、ある意味古典的なストー
リーに 「夢を見ていた」。季節は流れ、ミアの 「オーディション」 から 「もし
も、あの時・・・」 な終盤、二人が視線を交わす無言のラストシーンまで、もう
滂沱の涙。「これは私の映画だな」 って。

 2回目を観た後、なかなか3回目が観られなかったのですが、一番発見があ
った、というかシミジミ映画を味わえたのはやはり3回目でした。予告終わりに
スクリーンがシネスコサイズにガガ~って変わったことにもう、既に感動してた
もんね。さすがシネマート心斎橋さん! シネコンでは、今はもうスクリーンカー
テンを動かさないからね。。

 初見時、エンドロールに”Japanese Folk song by Rentarou Taki”
の文字を見つけて 「えええええ~~、ど、どこに??」 と驚いたのですが、
3回目でようやくわかった!(遅) 耳の良い方は初見でおわかりになると思
います。ライトハウスでテーブルに着くとき、ミアが指輪をテーブルに落とし、
セブがキャッチしてそのまま演技を続けている、っていうのも確認できた。
あと、ミアの働くコーヒーショップのクレーマー(グルテンフリー?)が監督の
彼女だ、ってのも(笑)。

 この映画のストーリーをなぞるように昇りつめた感のあるエマ・ストーンです
が、彼女の成功はライアン・ゴズリングがいてこそ、なんだよね、ゴズりんって、
本当に共演した女優さんを輝かせる。3回目の鑑賞では、ゴズりんがスクリーン
から飛び出してきて 「君、何度も観てるけどそんなにこの映画が好きなの?」
って話しかけてくるかと。。気分は 『カイロの紫のバラ』 のヒロインよ(笑)。

 しかしこの映画、絶賛ばかりでなくかなり否定的意見もありますよね。うちの
母も 「物足りない」 ってLINEしてくるし・・・(汗)。特に、映画をたくさん観てい
る方に否定的意見が多い気がする。確かに青臭いミュージカルではあると思う。
しかし、あの若い監督デイミアン・チャゼルの 「こういう映画を作りたいんだ!」 
っていう俺様猪突猛進な情熱を、ストレートに受け止めたいと私は思う。

 万感胸に迫るラストは悲恋物語のようでいて、実は極上の 「ハッピー・エン
ディング」 なのかもしれない。人生のひと時、ともに生きた男女が歩む 「それ
ぞれの道」。それは確かに、二人で見た夢の続き・・・。

ララランド2

 ( 『ラ・ラ・ランド』 監督・脚本:デイミアン・チャゼル/
          主演:ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン/2016・USA)

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[2017/05/28 22:05] | 映画 | トラックバック(1) | コメント(6) |
『牯嶺街少年殺人事件』
クーリンチェ2







 A BRIGHTER SUMMER DAY


 1960年代初頭の台北。本省人と外省人はそれぞれにコミュニティを形成し、
子どもたちはそんな大人社会の微妙な空気を感じ取りながら成長していた。
建国中学昼間部の受験に失敗した小四(張震チャン・チェン)は夜間部に入学し、
小明(楊静怡リサ・ヤン)と出逢う。

 長らくDVD化も再上映もされなかった 「伝説の映画」 を、4Kレストア・デジ
タルリマスター、3間56分版にて劇場鑑賞。恋焦がれた作品を観られる高揚感
はありつつも、約4時間というランタイムに多少身構えていたが、全く長さは感
じなかった。敢えて前知識はほとんど入れず、ネタバレの類も一切スルーして
鑑賞したためか、衝撃的な終盤の展開に混乱し、しばし感情の整理が難しかっ
た。唯一無二、傑作中の大傑作と言われ続けてきた本作は、今回の再上映で
その評価をますます揺るぎないものにするのだと思う。私にとっても、生涯ベスト
の一本となった。

◆◇ 以下、内容とラストに言及しています


 闇に明りが灯るファーストシーンから、この映画は一貫して 「光と闇の拮抗」 
を描いている。光と闇、昼間部と夜間部、富める者と貧しい者。懐中電灯をお守り
のように手にする小四は、闇に必死で抗いながら生きるが、最後の最後で光を手
放し、闇の中へ堕ちてしまう。

 小四を演じ、本作で銀幕デビューした張震チャン・チェンは、初登場シーンから
ただならぬオーラを放つ。隠しようのない膝の長さと腰の高さ、小さな顔。声には
幼さが残るものの、眉間に寄る皺は40歳になった今と変わらない。思春期に本名
で実在の役、しかも非常に特異な役柄を演じた彼に、アイデンティティの危機は無
かったのだろうか。「僕が君を守るよ!」 という小四の叫びには、『リリィ・シュシュ
のすべて』 や 『高校教師』 を思い浮かべてしまった。しかしこの映画、一体どれ
ほどのフォロワーを生んだことだろう。

 どちらかといえば大人しく、成績も家族仲もよかった 「普通」 の少年。恋した
少女の不遇を嘆き、世の不平等、不公平を嘆いたやさしい彼が、一瞬、磔にされ
たイエス・キリストのように映るシーンがある。彼は自らを犠牲にしてでも、少女を
救いたかった。彼は決して小明を傷つけるつもりなどなかった。なのに、なぜ? 
私にはわからない。終盤、それまでほとんど登場しなかった信心深い次姉が小四
と関わり始めることが、鍵のような気がするのだけれど・・・。

 今は亡き監督、楊徳昌エドワード・ヤン。彼が一体どんな思いで、ラストシーンに
至る小四を撮ったのか聞いてみたい。監督は、自らを小四に投影しているに違い
ないから。

 もし、私がこの映画を25年前に観ることができていたならば、何をどう感じただ
ろう? 多分、次々に男を渡り歩いているように見える小明を、好きにはなれなか
ったと思う。しかし、今ならばわかる。彼女が生きてゆくためには、そうするしかな
かったのだということが。裕福な小馬の広い邸で、銃を手に無邪気に笑う小明を
見つめながら、私は理解した。この子はきっと、次は小馬の下へ行くのだろうと。
それは正しいことではないのかもしれない、しかし許されるべきことだと、今の私
ならわかる。

 子どもらしく、無邪気に恋することよりも、早く大人になることを求められた少女。
そして25年前ならば、これほどラストシーンに胸を締め付けられることもなかった
だろう。「89086」 と胸元に刺繍されたシャツを、じっと見つめる小四の母。日常的
な風景の中で、動かず、物言わぬその背中から溢れる絶対的な悲しみに、ただ涙
するしかなかった。

 台北の緑風、遠景からぼんやりと浮かび上がる2台の自転車。活き活きと描かれ
る脇役の少年少女たち。アーチ型の窓から差し込む陽光、日本家屋。私の大好き
な台湾映画は、全てこの映画と地続きなのだ。光と闇、それはまさしく 「映画その
もの」 であり、私は確信した。渇望され続けたこの映画こそが、「真の映画」 なの
だと。

クーリンチェ3

 ( 『牯嶺街少年殺人事件』 監督・共同脚本:楊徳昌エドワード・ヤン/
         主演:張震チャン・チェン、楊静怡リサ・ヤン/1991・台湾)

テーマ:☆.。.:*・゚中国・香港・台湾映画゚・*:.。.☆ - ジャンル:映画

[2017/04/24 23:54] | 映画 | トラックバック(2) | コメント(6) |
The shape of voice 『聲の形』
          聲の形

 アニメばかり観ているわけではないのですが・・・。ちなみに京アニ初めて観ました。

 これも必見の作品です。原作は未読、しかし昨年の漫画賞受賞のニュースはチェックしていました。


 友だちとは?

 自己顕示欲と自己嫌悪。

 トラウマ。

 贖罪。



 学校という場所にいたことがある人、つまり全てのひとに刺さる部分がある作品だと思います。

 公開週の全国週末興行成績は、君の名は。とワンツー。

 安易には描けない、重いテーマの作品です。そしてそういう作品に、多くの若い人たちが詰め掛けたことに、希望を感じました。


 ちなみに、私の左隣は小学生(低学年)の女の子がひとりで観に来ていました。
 同じくひとりで来て、泣きじゃくっている 「隣のおばさん」 に、何度も視線を寄越していました(笑)。

テーマ:★おすすめ映画★ - ジャンル:映画

[2016/09/21 00:13] | 映画 | トラックバック(2) | コメント(0) |
YOUR NAME.
君の名は

 忘れたくなかった人

 忘れたくない人

 忘れちゃダメな人。


 『君の名は。』



 必見です。

テーマ:★おすすめ映画★ - ジャンル:映画

[2016/08/31 00:00] | 映画 |
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真紅のthinkingdays


映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅

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