ハッピーおじさんコレクション~『手』

配信会社に勤めるサワコは、かなり年上の男性と付き合うのが好きな25歳。
「ハッピーおじさんコレクション」と題したブログは三日に一度更新、自分が若い
うちに、なるべくたくさんの「おじさん」の話が聞きたいと思っている。
山崎ナオコーラの新作は、芥川賞候補になった表題作+3つの短編(『笑う
お姫様』『わけもなく走りたくなる』『お父さん大好き』)からなる作品集。晩秋の
公園にたたずむ中年男性の表紙は、書店で手に取るには少し躊躇してしまい
そうな雰囲気。
前作『長い終わりが始まる』同様、主人公は「自分の将来」に興味がなさそう
な若い女性。共感や同情はできないのだけれど、著者の描く人物像にはどこか
頷ける部分もある。
例えば、『お父さん大好き』で語られる「職場のランチ風景」。女子社員は必ず
決まったグループ(派閥とも言う)でランチを取らねばならない。3時には暗黙の
了解でお菓子を配らねばならない。ああーーー、イヤイヤそういうの!! という
著者の叫びが行間から滲み出ているようで、私は「ご同輩♪」と思わずにいられ
ない。「たとえ気が合わなくても、頑張っている人のことは応援したい」っていうの
も、わかる、わかる。
しかし、「好き」がわからない彼女たちのことはわからない。20代なんて、恋愛
に夢中にならないで何に夢中になるのサ。おじさんの話が聞きたいサワコが、
一体何を得たいのかも、、よくわからない。
でも、わからなくてもいいんだ。無理にわかろうとしなくてもいい。また次の作品
も、きっと読みますよ。
(『手』山崎ナオコーラ・著/文藝春秋・2009)
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日本のロリコン文化を批評する、新しいファザコン小説がここに誕生。
おじさんは可愛い。薄い髪、シワのある首、写真を撮って、ブログに載せ...
2009-04-08 02:31 :
粋な提案
コメントの投稿
こんばんは。
サワコの気持ちがよく伝わってきましたね。
はい、同じく、わからない部分があってもいいと思いますよ。
「~頑張ってる人のことは応援したい」が、気持ちよかったです。
サワコの気持ちがよく伝わってきましたね。
はい、同じく、わからない部分があってもいいと思いますよ。
「~頑張ってる人のことは応援したい」が、気持ちよかったです。
藍色さま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
ナオコーラさんは独自の世界観を貫いている方だと思います。
だから全てに共感はできないですが、目が離せません。
今後も追いかけたいと思います!
ではでは、またお伺いします~。
ナオコーラさんは独自の世界観を貫いている方だと思います。
だから全てに共感はできないですが、目が離せません。
今後も追いかけたいと思います!
ではでは、またお伺いします~。