浜野佐知さんを知っていますか~『女が映画を作るとき』

浜野佐知さんという女性映画監督を知っていますか? 30年以上に渡って300本
以上の「ピンク」映画を製作・監督した、日本の女性映画監督の先駆けです。
昨年12月に、NHK・ETV特集にて『愛と生を撮る~女性映画監督は今~』と
いう番組が放映されました。私は最初の数十分間録画に失敗した上、観たのは
今年に入ってからというドン臭さなのですが、なかなか興味深い番組でした。
シネカノン社長・李鳳宇プロデューサーをナビゲイターに、西川美和(『ゆれる』)、
荻上直子(『かもめ食堂』)、蜷川実花(『さくらん』)ら、近年活躍が目覚ましい
女性映画監督たちに迫ったドキュメンタリー。中でも浜野佐知さんという監督
に、私は目を奪われました。
化粧っ気のない顔にサングラス、伸ばしっ放しの髪。映画監督に憧れ、凄まじ
い差別とセクハラを受けながらも「映画を作りたい!」という一念でピンク映画業界
に飛び込んだこと。父の突然の死によって、女手一つで育ててくれた母を見なが
ら「手に職をつけたい」と強く思ったこと。
ともすれば湿っぽい苦労話になりそうなところを、自己憐憫に沈み込まない潔さ、
率直さで語るその姿から、人間としての彼女の魅力が立ち昇っていました。
「女性たちを、心も体も解放したい!」50歳を過ぎて、自主制作で2本の映画を撮った
こと。2作目の『百合祭』が高齢者の性を描いた作品だったことにより、激しいバッシ
ングを受けたこと。力強い口調で澱みなく語る浜野さんには李さんもタジタジで、
「浜野さんって、監督以外向かないですよね。声が大き過ぎですよ」なんて腰を引きな
がら話す姿には大笑いでした。そして私は「この人のことをもっと知りたい!」と思っ
たのです。
本書では、テレビのインタビューでも語られた映画人としての歴史に加え、『百合祭』
が各国の映画祭に参加し、そこで生まれた世界の女流映画人たちとの交流や、岩波
ホール支配人・高野悦子さんのインタビューなども盛り込まれています。故・深作
欣二監督が浜野さんのドキュメンタリーを撮りたがっていたことに驚き、やはり、
相当魅力的な人物なのだなと思わずにいられませんでした。そしてもう一人、故・
石原郁子さん(『菫色の映画祭-ザ・トランス・セクシュアル・ムーヴィーズ』の著者)
も彼女を支えた一人だったと知り、感慨深いものがありました。女性映画監督たち
の昨今の活躍ぶりを、浜野さんも、そして天国の石原さんも喜んでおられることと
思います。
自らを「遅れてきたフェミニスト」と呼び「女は50歳から」と喝破する著者。私も
元気を出さないと!と、励まされたのでした。
(『女が映画を作るとき』浜野佐知・著/2005・平凡社)
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2008-02-25 20:01 :
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真紅さん、おじゃまします。昨年見ましたよ、NHKの番組。西川美和監督の話よかったです。それと、この浜野佐知監督はすごい迫力でした。監督したいという執念に脱帽しました。私も恥ずかしながら映画監督になりたくてしょうがない時代もありましたが、普通のサラリーマンになってしまいましたので、この人の話に感動しまいた。すごい人ですね。
2008-02-11 21:39 :
筆知 刻久 URL :
編集
筆知刻久さま、こんにちは。コメントありがとうございます。
番組ご覧になったのですね。私も全部観たかったです(蜷川監督の途中から観ました)。
西川監督は、「書くことを通してしか自分を表現できない」と語っていたのが印象的でした。
美しい方ですが、内面の深さも感じました。
浜野監督、感動しつつ圧倒されましたよね。こんなパワフルな人、めったにいないと思います。
こういう良質の番組をまた観たいです。
ではでは、またお伺いします~。
番組ご覧になったのですね。私も全部観たかったです(蜷川監督の途中から観ました)。
西川監督は、「書くことを通してしか自分を表現できない」と語っていたのが印象的でした。
美しい方ですが、内面の深さも感じました。
浜野監督、感動しつつ圧倒されましたよね。こんなパワフルな人、めったにいないと思います。
こういう良質の番組をまた観たいです。
ではでは、またお伺いします~。
UP画像の
本は読ませていただきました。
動く浜野さんのその大きな声と迫力、
機会があれば観てみたいですね~。
映画製作の現場は、完全なる肉体労働だと
以前聞いたことがあります。
完璧な“男主導”の現場でもあるとね。^^
薄い記憶にあるのは
今村昌平監督「神々の深き欲望」で強烈な
デビューを飾った沖山秀子、彼女は今
素晴らしいジャズ歌手になっていますが
確か、一時、映画監督も目指したはず。
あと、ピンクではありませんが
大女優、田中絹代さん、左幸子さんも
映画を撮っていらっしゃいましたね。
・・・お若い真紅さんには
なじみのない役者さんかもね~^^
貴重な記事、ありがとうございました。(感謝)
動く浜野さんのその大きな声と迫力、
機会があれば観てみたいですね~。
映画製作の現場は、完全なる肉体労働だと
以前聞いたことがあります。
完璧な“男主導”の現場でもあるとね。^^
薄い記憶にあるのは
今村昌平監督「神々の深き欲望」で強烈な
デビューを飾った沖山秀子、彼女は今
素晴らしいジャズ歌手になっていますが
確か、一時、映画監督も目指したはず。
あと、ピンクではありませんが
大女優、田中絹代さん、左幸子さんも
映画を撮っていらっしゃいましたね。
・・・お若い真紅さんには
なじみのない役者さんかもね~^^
貴重な記事、ありがとうございました。(感謝)
viva jijiさま、こんにちは!コメントありがとうございます。
姐さんはテレビをご覧にならないのですよね。
私もあまり観ないのですが、ラテ欄はしっかりチェックします。
この番組は、期待以上だったと思いました。
少し前までは、映画製作の現場に女性はメイクさんと記録係さんくらいだったそうです。
外国でも、状況は似たようなものだったとか・・・。
やはり、力仕事の側面が大きいのでしょうか。
沖山秀子さん、左幸子さんのことは存じませんが、田中絹代さんの映画製作については番組でも触れられていましたよ。
本でも、高野悦子さんがお話になっていました。
高野悦子さんも映画監督になりたくて、その夢だけ叶わなかったとおっしゃっています。
私、全然若くないんですよ(笑)。でも、トシのことはあまり考えず、心は若くいたいですよね!
ではでは、私もまたお伺いします~。
姐さんはテレビをご覧にならないのですよね。
私もあまり観ないのですが、ラテ欄はしっかりチェックします。
この番組は、期待以上だったと思いました。
少し前までは、映画製作の現場に女性はメイクさんと記録係さんくらいだったそうです。
外国でも、状況は似たようなものだったとか・・・。
やはり、力仕事の側面が大きいのでしょうか。
沖山秀子さん、左幸子さんのことは存じませんが、田中絹代さんの映画製作については番組でも触れられていましたよ。
本でも、高野悦子さんがお話になっていました。
高野悦子さんも映画監督になりたくて、その夢だけ叶わなかったとおっしゃっています。
私、全然若くないんですよ(笑)。でも、トシのことはあまり考えず、心は若くいたいですよね!
ではでは、私もまたお伺いします~。