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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66

本当の自分に会うために~『トランスアメリカ』

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 LAに暮らすブリー(フェリシティ・ハフマン)は男である自分の身体に違和感を持ち、
心も身体も女性として生きるために、性転換手術を決意している。週末に手術を控
えた彼女のもとに、「あなたの息子さんを引き取りに来て欲しい」という警察からの
電話が入る。ブリーがかつてスタンリーという名の「男」だったとき、恋人との間に
息子が生まれていたのだ。セラピストに背中を押され、17歳の未だ見ぬ息子に会
うため、NYに向かったブリーは・・・。

 この映画も、昨年観たくてたまらなかったのに観逃してしまった一本。主演のフェ
リシティ・ハフマン
は本作でオスカーこそ逃したもののその演技を絶賛され、数多
くの主演女優賞を受賞した。トランスセクシャルの問題を超えた親子の絆の再生
描く、心温まるロードムービー。おすすめです。すっごくいい映画です。

 今更ながら、フェリシティ・ハフマンの演技は素晴らしい。どう見ても女性にな
りたい「男」にしか見えない、というか、観ているうちに「フェリシティ・ハフマンと
いう女優がブリーを演じている」ということを忘れてしまうのだ。ホルモン剤を飲ま
ないと胸が萎んだり、髭が濃くなったり、髪がぼさぼさだったり。ディテールもリ
アルに作り込まれている。

 初めて息子であるトビーの部屋で「スタンリー」だったときの自分の写真を見たとき、
思わず仕草まで男に戻ってしまうブリー。不自然なほど女らしい「しな」を作るブリー
が、ただ一度だけ見せる男の部分だ。ここだけは大いに笑えたけれど、物語は決し
てコメディタッチに流れることなく、ブリーとトビー「親子」の旅を丹念に映しとって
ゆく。

 実母は自殺し、継父から性的虐待を受け家を飛び出し、NYで男娼として生きてい
トビー。彼が若く美しい少年であることに驚きを隠せないブリー。トビーを演じ
ケヴィン・ゼガーズは、ダンカン・タッカー監督に「こんな美しい人は見たことが
ない」
と言わせるほどの美貌の持ち主。若さゆえの甘さと鋭さ、大人になりかけた
少年だけが持ち得る純真さと確かな演技力で、未完成だけど魅力的な人物としての
トビーを好演している。「親父と暮らすのが夢」で「動物図鑑」が宝物で、ブロンドに
して映画に出るつもりで、サルのぬいぐるみと寝るトビー。こんなかわいい男の子、
見たことない!
もちろん私も「目がハート」状態。リバー・フェニックスの再来と言わ
れているらしいけれど、私には小池徹平くんがちょっと入っているように見えた。

20070211011543.jpg

 カウボーイハットの
 エピソードもいい



 ロードムービーは不思議だ。同じ車に乗り込み、同じ方向を向いてただ走るだけ
のようでも、そこには独特の空気と光が生まれる。旅の終着点で何かを得ても、得
なくても、一緒に旅し、共有した時間は何者にも代え難い。ブリーがトビーを心配
し、トビーはブリーを笑わせようとする。もちろん、旅はいつも平穏なわけではな
い。
 
 親子の関係も不思議だ。何年も会うことなく、子の人格を否定しながらも、我が
子が傷つけば庇うのが親なのだ。ましてや、存在さえも知らなかった「孫」が目の前に
現れた瞬間、過剰なまでの親愛の情が溢れ出すのはどうしてだろう?

 自らが望んだ身体を得ながら「心の痛み」をも知り、慟哭するブリー。「許していな
い」と言いつつも、父の元を訪れるトビー。抱擁も涙もない、さり気ないラストシーン。
悲しみや苦しみ、痛みを超えた親子の絆の再生を、静かに伝えてくれる。

20070211011735.jpg

 実はこんなに美しくてゴージャスな
 フェリシティ・ハフマン

 後ろは本作の製作総指揮を務めた
 ウィリアム・H・メイシー

 ご夫婦です。ラブラブですなぁ。。



『トランスアメリカ』監督:ダンカン・タッカー/
     主演:フェリシティ・ハフマン、ケヴィン・ゼガーズ/2005・USA)
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テーマ : 心に残る映画
ジャンル : 映画

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トランスアメリカ ☆ スカートの下に何があるかより もっとだいじなこと。
本日、長野グランドシネマズで鑑賞♪
2007-02-19 17:49 : ☆お気楽♪電影生活☆
トランスアメリカ
トランスアメリカ ¥3,420 アメリカ 2006年フェリシティ・ハフマン、ケヴィン・ゼガーズ、エリザベス・ペーニャ、フィオヌラ・フラナガン、グレアム・グリーン、バート・ヤング、キャリー・プレンストン監督・脚本:ダンカン・タッカー音楽:デヴィッド・マ
2007-02-25 19:42 : 映画を観よう
トランスアメリカ
2006年 アメリカ 2006年7月公開 評価:★★★★☆ 原題:TRANSAM
2007-02-26 19:10 : 銀の森のゴブリン
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タッカー・トーペード - トマス・ローウェル・タッカーが製造した自動車 タッカー (映画) - トマス・ローウェル・タッカーについての映画・[映画]ダンカン・タッカー『トランスアメリカ』―「新しいテーマは ...・[映画]ダンカン・タッカー『トランスアメリカ』・トラン
2007-03-11 17:10 : 映画を考える
「トランスアメリカ」面白かったです
テンポも良く、ずっと面白く見れたし、主役の2人が、とても良かった。
2007-04-23 15:11 : ポコアポコヤ 映画倉庫
トランスアメリカ
トランスアメリカとは,アメリカ大陸横断のこと。これは、トランスジェンダーのブリーと、彼の息子トビーの二人の魂の旅路の物語だ。 念願の性転換手術を目前にしたブリーの前に突然,警察からの問い合わせという形で 出現したトビー。彼は、ブリーがスタンリーという名の
2007-10-22 00:54 : 虎猫の気まぐれシネマ日記
トランスアメリカ
 『スカートの下に何があるかより もっとだいじなこと。』 コチラの「トランスアメリカ」は、7/22公開のちょっぴり複雑な父子のハートフルなロードムービーで、製作総指揮のウィリアム・H・メイシーの妻のフェリシティ・ハフマンが性同一性障害(トランスセクシャル)....
2007-11-12 21:40 : ☆彡映画鑑賞日記☆彡
トランスアメリカ
レンタルで鑑賞―【story】男性であることに違和感を持つブリー(フェリシティ・ハフマン)は、肉体的にも女性になるための最後の手術を控えていた。そんな彼女の前に、トビー(ケヴィン・セガーズ)という17才の少年が出現する。彼はブリーが男性だった頃に出来た息子で
2007-11-29 16:55 : ★YUKAの気ままな有閑日記★
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こんにちは♪
私も、秋に観ました~!
フェリシティ・ハフマンの変化の大きさには驚かされました!
大好きな女優さんでドラマも欠かさず観ています。
このご夫婦、映画賞の授賞式などいつも一緒で
観ていて嬉しくなってしまいます♪

TBが出来ない~残念!
2007-02-19 11:05 : ひらで~ URL : 編集
ひらで~さま、こんにちは。コメントありがとうございます。
TB、残念ですぅ(涙)。
私はドラマは観ないのですが、昨年のGG受賞式で『デスパレートな妻たち』の共演者に向かい、フェリシティが満面の笑顔でVサインしていたのがとても印象に残っています。
彼女は下積みが長かったようなので、この作品で世界的に有名になってよかったですよね。
旦那さんのウィリアム・H・メイシーもいい役者さんですよね!
こちらからもお伺いしますね~。ではでは。
2007-02-19 11:22 : 真紅 URL : 編集
こんど、やってみたらTB出来ました(^^)v
タイミングとか何か、不具合があったのかしら?

今年のGG授賞式でもラブラブでした♪
ドラマも面白いのでぜひ観てください。
2007-02-19 17:53 : ひらで~ URL : 編集
ひらで~さま、再びのコメントとTBをありがとうございます!
お手数かけてすみません。TB、不調で困ります・・。
『デスパレート~』はNHKのBSで放映されているのですよね?
一度観てみますね!ではでは、またお伺いします。
2007-02-19 22:58 : 真紅 URL : 編集
これもやっと
観ました!!良かったですねぇ~
こんなに素敵な作品♪

今年のアカデミー賞がもうすぐ決まりますが・・
この演技をもってしても受賞ならなかったのはとても不思議です!!
そのくらい見事でしたネ、フェリシア・ハフマン!!

また観たい作品です!
2007-02-25 19:30 : D URL : 編集
Dさま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます!
うわ~、ご覧になったのですね。うれしいなぁ。。
私もこの映画大・大・大好きです♪
皆さんにオススメしたいのですが、あまり知られてないですよね?
リースも確かにいい演技でしたが、フェリシティにオスカー獲らせてあげたかったですよね。
後ほどお伺いしますね。TB、成功するといいのですが。。ではでは。
2007-02-25 21:26 : 真紅 URL : 編集
今晩は
僕はこの映画がとてもストレートな映画に思えました。主人公2人の組み合わせはかなりひねったものですが、親子の情がストレートに伝わってきました。
2007-02-26 18:19 : ゴブリン URL : 編集
申し訳ありません。先に違う記事をTBしてしまいました。お手数をおかけしますが削除願います。
大変失礼いたしました。

2007-02-26 19:10 : ゴブリン URL : 編集
ゴブリンさま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
TBの件、削除しておきましたので気になさらないで下さいね。
私もこの映画はとってもストレートな「家族」を巡る物語でもあると思いました。
もちろん、ブリーの成長譚でもあり、トランスセクシャルをテーマにした真摯で画期的な映画だとも思います。
後ほどTBを携えてお邪魔いたしますね。ではでは!
2007-02-26 21:18 : 真紅 URL : 編集
ひろこさま、初めましてこんにちは。
コメントありがとうございました。
2007-03-31 13:27 : 真紅 URL : 編集
真紅さん、あの方はW・H・メイシーの奥様だったのね!!!
しかも本当は美しい方じゃないですかぁ~。
ブリーとは全く思えないです。
これはまるっきり騙されちゃいました!
ブリーの俳優さんはてっきり男優さんだと思いこんで最後まで観てましたから。。。
改めて女優さんだと考えると、お見事としか言いようがないですよね。
父子の再会も、ベタベタしたお涙頂戴じゃなくって、コミカルだけど彼らの先に希望が見えるようなラストが良かったと思います☆
2007-04-08 15:19 : なぎさ URL : 編集
真紅さん、こんにちは

レンタルで観ました。
フェリシティ・ハフマン凄く良かったです!
オスカー取ってもいいくらいです。上のご主人とのツーショットでは艶やかで美しいです。綺麗な方なんですね。
トビー役の子もとっても可愛くってちょっと好きになりました~
劇的な感動シーンもないし、ラストもスーッと終わってしまったけれど、じんわり暖かいものが残りました。 いい映画です。
2007-04-08 17:13 : AYA URL : 編集
なぎささま、こちらにもコメントありがとうございます。
そうなんですよ~、ご夫婦です!
フェリシティ・ハフマンがこの作品でGGの主演女優賞を受賞したとき、W・H・メイシーを「私の北極星」と言っていたのがすっごく印象的でした(ちょっと冬ソナ入ってますけど)。
スピーチする彼女を見つめるW・H・メイシーの表情もまたいいんですよ~。
二人三脚で創り上げた映画だったんだと思いました(感涙)。
本当に、見事な演技でしたよね。
ラストもさり気なく、でも心温まるものでした。
いい映画です。大好きです。
またお伺いしますね。ではでは~。
2007-04-08 19:45 : 真紅 URL : 編集
AYAさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
ご覧になったのですね♪よかったですよね~。。
フェリシティ・ハフマンはオスカー大本命だったようなのですが、リースに持っていかれてしまいました。
『ウォーク・ザ・ライン』はホアキンも頑張っていたので、リースに票が集まったのかも知れませんね。
そうそう、本当はゴージャスで美人なのに、あのメイクと役作りは天晴れ!です。
ケヴィンくんも可愛かったですよね~♪今後要チェックです!
また遊びにいらして下さいね。ではでは~。
2007-04-08 19:46 : 真紅 URL : 編集
真紅さん、こんにちは!
おおお~~真紅さんも、小池徹平入ってるって思われていたなんて!!
これ、なかなか良い映画でした。
こちらで、彼女の普段の美しい姿を見れて、かつ、ご夫婦の事も知れて、有意義でした^^

PS 最新記事も拝見させて頂きました。私も、ノラジョーンズ出演のウォンカーワイ監督の映画、すっごく興味津々です。あと、イ・チャンドン監督と、ギドク監督の映画も、楽しみです!
2007-04-23 15:16 : latifa URL : 編集
latifaさま、こんにちは~。コメント&TBありがとうございます!
ケヴィンくんいいですよね♪ 私、以前はウエンツ派だったのですが、最近徹平くんのほうがいいかな・・などとまたミーハーなことを(笑)

王家衛の最新作、ジュードも出てるしむっちゃ楽しみですよね~、もうワクワク♪
日本でも早く観られるといいですね!
イ・チャンドン先生の映画も何年も待っていたので、絶対に公開して欲しいです。
ではでは、今からお伺いします~。
2007-04-23 15:41 : 真紅 URL : 編集
真紅さま こんばんわ
この映画,きっと真紅さまもお好きだと思いました。とてもよくできた,そして考えさせられる作品だから。
本当は重いテーマなんですよね。でも,全体を流れる何ともいえないあたたかさは,監督の視点なんでしょうか。人間に対する愛を感じましたね。
真紅さまも仰る通り,親子の情って,本能的に備わっているのでしょうかね。血は水よりも濃い、と言いますが・・・。ブリーが親の心を芽生えさせていく過程は,とても心温まるものを感じました。
親子の絆を感じさせる,さりげなくて優しいラストシーン。過剰な演出がなかったのがかえってとても素敵でした。
2007-10-22 01:01 : なな URL : 編集
ななさま、こんにちは。コメント&TBをありがとうございます。
はい、この映画大好きです!小さいけれど温かくて、とてもやさしい映画だと思います。
ロードムービーでもあるし、親子っていう繋がりを考えさせてくれる秀作ですね。
ラストシーン、お母さんのような、お父さんのようなブリーがとってもよかった!
さり気ない雰囲気がとっても心に沁みましたね。
それにケヴィンくんが素敵でしたわ~。。この作品以降見かけないですが、頑張って欲しい俳優さんです。
ではでは、後ほどお伺いしますね。
2007-10-22 09:25 : 真紅 URL : 編集
こんにちは!
先日レンタルで鑑賞しました。
物語もとても好きでしたし、ロードムービー特有の温かさも感じました。
フェリシティ・ハフマンは素晴らしかったですね~
どう見ても女性になりたい男性にしか見えなかったもの。
で・・・私は息子役のケヴィン君が好みでしたぁ~
昔のレオを見ているようで・・・トキメキました(笑)
2007-11-29 17:17 : 由香 URL : 編集
由香さま、こんにちは♪ コメント&TBをありがとうございます。
この作品、私も大好きです。ロードムービー特有の温かさ、あの空気感がいいですよね~。
フェリシティ・ハフマンにオスカーをあげたかったです。
私も、ケヴィンくんにはトキメキましたよ~、本当に綺麗な男の子ですよね!
昔のレオ。。私も「発見した!」と大騒ぎしてました(遠い目)。
ではでは、これからお伺いしますね~。
2007-11-29 21:50 : 真紅 URL : 編集
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